米国・ロサンゼルスの建築家/家具デザイナー/映画監督でもあった「チャールズ&レイ・イームズ」は、家具やインテリアにちょっとでも興味を持った人なら知らない人はいないであろう伝説的な人物です。
とくに「イームズシェルチェア」や「イームズラウンジチェア」の知名度は家具デザインを知らない人でも何処かで見たことがある名作です。
そんなイームズの現在の立ち位置や評価をお伝えします。
さらにイームズデザインを一覧にして紹介します。
以前よりデザインの扱いのランクが上がったと認識されていますよ。
イームズ夫妻の名作家具の数々
イームズ夫妻は第二次世界大戦中に成形合板(プライウッド)を使い「レッグスプリント(足の添え木)」を大量に生産をして資金を稼いでいました。
この技術を活かして戦後、成形合板を使った家具の製品化に乗り出しました。
そうして数々の名作家具が生まれました。
イームズ夫妻の最も有名なデザインと言えば先述の「イームズラウンジチェア」と「イームズシェルチェア」でしょう。
この二つは格別に普及している量が多いため、それこそデザインに興味がない人でも目にしたことはあるはずです。
シェルチェアはよく『駅のベンチみたい』と言う人がいますが、それは逆でイームズシェルチェアを参考にして駅のベンチが生まれたんです。
イームズ夫妻の製品化された家具の元祖は「プライウッドチェア」です。※本当はチルドレンチェアのほうが早いです。
1946年に米国ミシガン州のハーマンミラー社より発売され、2020年現在まで製造販売が続けられる名実ともに名作家具です。
20世紀を代表するアメリカンデザインとしても君臨しており、イームズ夫妻の思想が詰まった逸品です。
このプライウッドチェア以降イームズ夫妻はハーマンミラー社と共同して家具デザインを始めたことで多くの傑作を生みだすことになります。
一部ご紹介します。
1945年 イームズプライウッドテーブル
1945年 イームズチルドレンズチェア
1946年 プライウッドスクリーン
1948年 イームズプラスチックシェルチェア
1948年 ラ・シェーズ
1949年 イームズコーヒーテーブル
1949年 イームズストレージユニット
1949年 イームズデスクユニット
1950年 イームズワイヤーチェア
1950年 イームズワイヤーベーステーブル
1951年 イームズエリプティカルテーブル
1953年 イームズハングイットオール
1954年 イームズソファコンパクト
1956年 イームズラウンジチェア
1957年 イームズコントラクトベーステーブル
1958年 イームズアルミナムグループチェア
1960年 イームズウォールナットスツール
1960年 ソフトパッドグループチェア (タイムライフチェア)
1968年 インターミディエイトチェア
1969年 イームズソフトパッドグループチェア
1984年 イームズソファ
などなど数多くのデザインが存在します。どれも名作家具です。
多くはイームズ夫妻が亡くなった後も引き続きハーマンミラー社が製造を続けており、この革新的なデザインを世界へ向けてセールスを続けています。
※ラ・シェーズを製品化したのはヴィトラ社のため製造販売はヴィトラです。
彼らの代表的建築物と言えばイームズハウスと呼ばれるCASE STUDY HOUSE #8です。
ロサンゼルスのパシフィックパセリーズに1949年に竣工されました。
今なお残るミッドセンチュリー期の名作建築として現存しています。
イームズ夫妻亡き現在はチャールズの孫であるディミトリアス・イームズが代表を務めるイームズオフィスがライセンスを管理しており、イームズオフィスとハーマンミラー社とのコラボレーションにより製品の復刻とデザインの保護をしてハイクオリティな家具の製造を実現しています。
ちなみにチャールズ・イームズの孫は4人います。
私はディミトリアス氏と下記リンクの時に会いました。
イームズファウンデーションの代表であるルシア・デューイ・アトウッド氏は下記リンクの時に会いました。
イームズブームそしてミッドセンチュリーブーム
そんなイームズの知名度が日本でぐっと上がったのが90年代後半から始まった「ミッドセンチュリーブーム」によるものです。
実際、それ以前のインテリアの本を読むとわかるのですが、シェルチェアの写真があってもイームズという名前も書かれていませんでした。
”西洋椅子”なんて紹介されていることもあります。
ミッドセンチュリーブームが始まるきっかけを作った一人でもある東京・目黒の家具屋オーナーが私の前職の社長なのですが、彼によると90年代後半はイームズ展をデパートでやっても当時は一般の人だけでなく建築やデザインをやっている人たちでもイームズを知らないのが普通だったそうです。
それからそのキャッチーな見た目とともにミッドセンチュリー期のデザインが続々と日本で紹介されたことで興味を持つ人が増え、特に裏原界隈のアパレルヒットメーカー達の影響により当時の20代の若者たちの間でムーブメントがおこりました。
このミッドセンチュリーブーム時はこぞってイームズの家具を人は集め、ヴィンテージを輸入すれば飛ぶように売れた時代だったそうです。
家具を置いたら置いただけ売れてヴィンテージのシェルチェアが月に数百枚も売れたそうです。うらやま。
しかしブームはブームですので終わりも来ます。
ブーム終了のきっかけがあったわけではありませんが徐々にその勢いは力を落としてきました。
一つの要因としてヴィンテージ品の不足と高騰があります。
ブーム開始時はイームズの家具はまだ求めている人が少なく、ヴィンテージ市場にもシェルチェアの在庫が山ほどあり値段も安かったです。
それが、求める人が増え販売するお店も多くなったことで需要が集中したことで徐々に数が少なくなってきました。
ヴィンテージ品は増えませんから当然ですよね。
数が少なくなるということは比例して市場価値も上がっていきます。
以前は手軽に買えたヴィンテージイームズ家具も値段が上がることで売れづらくなり、そのうえ数が揃えられづらくなったことでブームによるオープンしたお店は廃業や商売替えが増えたことで露出が減りました。
そうして少しずつブームが終わりを迎えました。
(その時の店舗の様子)
私がこの業界に入ったのは2006年のことですが、この時点ですでに終焉を迎えつつある状態でしました。
いやもう終わっていたかもしれませんね。
けど、それ以降もっと売れなくなってきましたから本当の終わりはもう少し先の年でしょうか。
ブームが終わるということは次のブームがあるということです。
そして次に大きな流れとなったのは北欧デザインです。
これは現在も引き続き長く続いているムーブメントです。
こうしてイームズブームが終わると現れるのはブームの時に流行っていたもの軽視する人たちです。
底の浅い輩ほど日和見主義者でブームが終わったことでその時代のことを馬鹿にすることで自分は次のステップに行っていると錯覚させる人たちがいたのは事実です。
こうした人がイームズは”古い”とか”初心者向け”とか”終わった”とか言うんです。よく知りもしないのに。
王道を非難しているようなものですのでマイルス・デイビスやジミ・ヘンドリクスを軽視しているようなものです。
そして現在のイームズデザインの扱い
では今現在のイームズの評価はどうかと言いますと、一周してブームとは関係が無く一定の地位と評価を得たデザインがイームズ夫妻の家具です。もはやブームがあったということ自体昔の話です。
というのも、彼らのオリジナルデザインは60年も70年も前のものとなり、それらヴィンテージ品もアートピースとして扱われるようなデザインも出てきたことで価値があがりました。
イームズ夫妻のデザインは時が経ったことで格があがりました。
ヴィンテージ品が貴重になり数が少なくなるとともに入れ替わるようにイームズの家具の復刻を続々とハーマンミラー社が行いました。
今はイームズの家具は復刻した正規品を手に入れるのが普通となりました。
同時に、ハーマンミラー社自体が強く大きな会社になり世界的にもセールスが伸びたことで、ハーマンミラー社の家具自体がランクの高い存在として認識もされています。
提案するイメージやコーディネートシーンは常に時代の先を行く上質さです。
合わせる家具の存在も必然的に上がります。
こうしたことからイームズの家具は評価の高い名作デザインという位置づけとなっています。
今現在は新品が主流の時代であり、彼らのデザインを所有すること自体が価値ともなっています。
逆にヴィンテージ品はある種マニア向けに代わっています。
ブームの時は一般家庭でも普段使いでヴィンテージのシェルチェアを並べたものですが、今となっては珍しい人たちです。
イームズ夫妻のデザインがどうして日本で受けるかというと、彼らは日本の要素をデザインに取り入れていたからです。
自宅ですき焼きパーティーをしたり、こけしなど民芸品を収集したりと日本の伝統的文化に興味をもっていました。
だから日本人にも親しみを感じるわけですね。
私はハーマンミラー社の正規販売店を経営していますが、同時にヴィンテージのハーマンミラー製品の仕入れ・販売もしています。
が、ヴィンテージ品の需要は以前に対してめっきり減りました。
だからイームズ夫妻の家具はこれからもっと価値が上がっていきますので、初心者向けでも何でもなく、家具デザイン入門からデザイン玄人まで幅広い人たちに愛されるクラシックモダンです。
イームズデザインどうですか?
私の専門ですけどお勧めですよ。日本で一番イームズに詳しい人物になろうとしています。
彼らの半生や歴史は下記リンク先でまとめてありますので興味があればお読みください。
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