– Diamond Chair –
デザイナー: Harry Bertoia (ハリー・ベルトイア)
彫刻家ハリー・ベルトイアが1952年にデザインをしたダイヤモンドチェアは、まさに彫刻をそのまま椅子にしたような佇まいです。
米国Knoll社から製造販売をされました。
ミッドセンチュリーモダンを代表する芸術とも言える椅子
ダイヤモンドチェアがどういった経緯で生まれたのかの話をするためには40年代にまで話をさかのぼる必要があります。
ハリー・ベルトイアはイームズ夫妻に誘われカルフォルニアに移り住み、ロサンゼルスのイームズオフィスのメンバーとして活動をしていました。
彼自身は成形合板という存在そのものに否定的な立場ではありましたが、やがてスチールワイヤーを利用した家具デザインに携わることになります。
(書籍 THE WORK CHARLES)
もともとイームズ夫妻はイームズシェルチェアを金属の一体成型で作り上げたという願望がありました。しかしその製作は当時の技術では難しく完成には至りませんでした。
そこでシェルチェアの形状をスチールワイヤーで再現する構成の試作を開始しました。
上写真が実際にイームズオフィスで手掛けられたイームズワイヤーチェアのプロトタイプたちです。
このワイヤー組み構造に多大な貢献をしたのがハリー・ベルトイアです。彼は金属彫刻家であり、その技術かいかんなく発揮されました。
その後ベルトイアは1950年にイームズオフィスを離れKnoll社へ移動することにあります。
兼ねてからハンス・ノルからのアプローチもあり、ペンシルバニアに引っ越しをすることになります。
ハンスは用意した工房でベルトイアに自由な創作活動をさせます。
(書籍 Chairs直撮り)
ハンスはKnoll社の社長であり、ベルトイアは同社で発売する家具作りに取り掛かります。
そして選んだ素材はやはりスチールワイヤーでした。
金属彫刻家として金属の家具を作ることにし、いくつかの試作品(上写真)を経てベルトイアの家具シリーズが完成しました。
その中の一つがこのダイヤモンドチェアです。
1952年にデザインされKnoll社から発売されました。
同時にラージダイヤモンドチェア、オットマン、ハイバックチェア、バードチェア、サイドチェア、スラットベンチもデザインされました。
ベルトイアは自身の家具を「彫刻の様で、空気で出来ている。」と表現しています。
よく見るダイヤモンドチェアはおそらくダイニングチェアタイプのサイズだと思います、
ダイヤモンドチェアにはサイズが2種類あります。
ラウンジチェアサイズのラージダイヤモンドチェアもあり、こちらはオットマンと一緒に活用することが考えられています。上写真の物がラージサイズです。
ラージダイヤモンドチェアはショックマウントが来ますので厳密にいうとただのサイズ違いではありません。
(書籍 MID-CENTURY MODERN FURNITUR OF THE 1950s BY CARA GREENBERG 直撮り)
左のフルカバーがハイバックチェア、右がラージダイヤモンドチェアです。
ベルトイアの家具はデザインも優れ発売時から人気が高く上々な滑り出しでしたが、そのデザインがイームズワイヤーチェアの特許を侵害しているとミシガン州のハーマンミラー社から訴えられることになります。
裁判の結果Knoll側は敗訴をすることになります。
確か・・・当時特許使用料をハーマンミラー社に払っていたと記憶しています。
しかしそれでもベルトイアの家具は売り上げも良く、この売り上げで十分な報酬を得たベルトイアはその後、アーティスト活動に専念することになります。
以後、家具をデザインすることはありませんでした。
当時も現在もベルトイアのワイヤーチェアは名作家具としてKnoll社が正規品を製造販売し続けています。
また、ライセンスはハリーの娘が財団を運営して管理をしています。
ダイヤモンドチェアは飾っておくだけも意義がある椅子として、座れる彫刻とも呼べる名作です。
その影すら美しい。
(NYCのKnollショールームで撮影した写真)
2015年には純金メッキを施したダイヤモンドチェアがラインナップに加わるなど、米国のラグジュアリーブランドらしい展開をしています。
ダイヤモンドチェアは正規品でも米国製、イタリア製、日本製と製造国がいくつか分かれます。どれも構造やサイズが違います。ヴィンテージや市場価格もそれぞれ全く異なりますので注意が必要です。Knoll製だからといっても全部同じ仕様と同じ価値というわけではないです。
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