私はイームズ関係ならなんでも任せてくださいというぐらい知識や提案に自信があります。
イームズシェルチェアの素材の違いや選び方のポイントを書きました。
この更新はものすごく長いですが最後まで読む価値ありますよ。
イームズマニアというわけではないのですが仕事の専門の一つです。自分のやっているお店もそうですがアメリカンミッドセンチュリーが最も得意な分野なんです。
そもそもイームズからこの世界に入り、今ではハーマンミラー正規販売店を経営して、なおかつイームズハウスやハーマンミラー米国本社まで行けました。
特にイームズのデザインなら新品の正規品を販売していてヴィンテージの知識も相当あり、シェルチェアに限らずほぼすべてのものを網羅しています。
そしてそのイームズ夫妻の家具というとイームズシェルチェアが一番有名でしょう。
(イームズラウンジチェア説もありますけど)
イームズシェルチェアはハーマンミラー社から現在も正規復刻されているのですが、素材がポリプロピレン、ファイバーグラス、プライウッドと3つ用意されています。 (EUはヴィトラ社)
初めてイームズの作品を知ったという人にはこれらの素材選びが難しいのではないでしょうか?
「シェルチェアの素材が違うと値段も違う。いったいそれぞれの素材は、どういった目的で選べばいいんだろうか・・・?」となっちゃいません?
※リプロダクト品やジェネリック品がたくさん存在するイームズシェルチェアですが、重要なことを最後に書いていますので参考にしてください。
そこで専門家である私がイームズシェルチェアのそれぞれの違いや選び方を書いてみます。
イームズシェルチェアのそれぞれの違いや選び方を書いてみます。
(価格は2022年3月現在)
現在シェルチェアに存在する3種類の素材とは。
(http://www.hermanmiller.co.jp/products/seating/multi-use-guest-chairs/eames-molded-plastic-chairs.html)
ポリプロピレン製
¥52,800(税込) ~
イームズプラスチックシェルチェアという名称です。
(http://www.hermanmiller.co.jp/products/seating/multi-use-guest-chairs/eames-molded-fiberglass-chairs.html)
ファイバーグラス(FRP)製
¥95,700(税別) ~
イームズファイバーグラスシェルチェアという名称です。
(http://www.hermanmiller.co.jp/products/seating/multi-use-guest-chairs/eames-molded-wood-chairs.html)
プライウッド(成形合板)製
¥110,000(税別) ~
イームズウッドシェルチェアという名称です。
素材はポリプロピレン(PP)、ファイバーグラス(FPR)、プライウッドの3種類です。
いざ自分がシェルチェアが欲しいな!と思った時に、どういった人がどんな素材を買うべきなのかですが、、、
簡単な答えは予算ですよ。
身も蓋もないですが財布と相談です。
値段がご覧の通り全然違いますので、自分に合わせた予算で選べば良いです。
でも、値段じゃなくて、好みや自分に合うもの、自分と相性が良いかどうかで決めたいという場合が肝心ですよね。
私もよくお客さんには「もし値段が一緒ならどれが欲しいのか」ということはシェルチェアに限らずどんな家具にでも言うことです。
ですがそれには判断材料が必要です。
素材の違いは、どういったストーリーがあって、どうして存在するのか。
それを知らないと、好みに合うかどうかの判断もできません。
何を判断にして自分の好みに合うかがわからないということです。
これ伝わります?
私が思うシェルチェアの選び方はこうです。
長文なので頑張って読んでください。
ポリプロピレン(以下PP)ですが、これは復刻したイームズシェルチェアにしか存在しない素材です。
もともとイームズのシェルチェアはハーマンミラー社によって1949(48)年から製造販売されていたものです。
最初の製造会社はゼニス(ジーニス)プラスチック社ですが、販売は初めからハーマンミラー社がおこなっていました。
シェルチェアの製造販売は80年の終わりまで続けていました。
その時の素材がガラス繊維の入った強化プラスチックでしてFRPという素材でした。
製造が終わった後も90年の初めごろまでは販売をしていました。
製造を辞めた理由は「FRPは燃やすと炭素が出るしリサイクルできないから環境に良くないよね」というのが大きな理由だと発表されています。
シェルチェアの製造を辞めてからハーマンミラー社では長らくシェルチェアを販売しませんでした。
それからシェルチェアを最初に復刻製造したのがドイツのヴィトラ(Vitra)社です。
イームズオフィスと正式にライセンスを交わしその時に素材をPPにしたんです。90年の終わりごろに製造を始めました。
このころ復刻されたパントンチェアや他の家具でも素材をPPにしたものが多かったです。
シェルチェアがPP素材で復刻したときのカラーバリエーションは、50年代のイームズシェルチェアのカラーを踏襲したようなラインナップでした。
販売はヨーロッパ以外はハーマンミラー社が行いました。
後に2010年からはハーマンミラー社もPP素材でのイームズシェルチェアの復刻製造をするようになりました。
現在でもイームズオフィスとのライセンスの関係で、ヨーロッパなどはヴィトラ製が正規品として流通しており、それ以外はハーマンミラー社が正規品となって製造販売されています。
日本はもちろんハーマンミラー製が正規品ですからヴィトラ製のイームズ製品は一部を除き販売されません。
今ではペール(淡い)カラーが多くカラーバリエーションもすごく豊富になりました。
カラーラインナップもヴィンテージに存在した色を踏襲せずに、現代のニーズに合わせた色合いを作っているのが特徴です。
素材と相まってナチュラルな空間にも合わせやすいシェルチェアになっています。
PP製のシェルチェアは、イームズの椅子だからといってアメリカンミッドセンチュリー感に薄い雰囲気を持っており、”イームズは好きだからシェルチェアは欲しいけど北欧テイストに合わせたい”や、”現代的な空間にしたい”や”色が薄めの木の家具に合わせて軽やかな空間にしたい”といった、そんな要望の場合はPPを選ぶのが良いです。
>>イームズプラスチックチェアの歴史やもっと詳しく情報を知りたい場合はこちらをクリックしてご覧ください。
ファイバーグラスシェルチェア(以下FRP)ですが、これは2014年に復刻された素材です。
先述の通り、過去にFRP製でのシェルチェアの製造を辞めた経緯があったうえでの復刻です。
が、復刻したFRPシェルチェアは”リサイクルできる環境に配慮したFRP”というのが大きな魅力です。
だから厳密に言うとヴィンテージシェルチェアと同じFRP素材ではありません。
この復刻したFRPシェルチェアはヴィンテージで存在した素材ということを意識しており、カラーバリエーションも当時ヴィンテージに存在したカラーを踏襲しています。
ヴィンテージのシェルチェアと変わらない色合いをしています。
だから最近の家具ではあまり見ないようなビビットな色合いをしています。
それが良いんですけどね、クラシックモダン感があります。
だからファイバーグラスシェルチェアが置いてあると”まさにイームズのシェルチェア!”を感じられて、ミッドセンチュリーの象徴という感じがします。
私のようにヴィンテージ品からイームズに入った人間にとっては、もっとも馴染みがある素材はこちらでしょう。
FRPのシェルチェアは存在感が違います。主役感があります。
濃い木の色のダイニングテーブルやそういった空間に合わせると渋く格好良くなります。
さらにFRPは使い込んで経年劣化したのが”味”になります。
キズがついても色焼けしてもそれが”味”です。
使い込んでいく楽しみや長年の変化を楽しむならFRPです。
それからヴィンテージ品が好きな人や、イームズ自体が好きな人、重厚さを求める人にはこの素材です。
>>イームズファイバーグラスチェアの歴史やもっと詳しい情報を知りたい場合はこちらをクリックしてご覧ください。
イームズウッドシェルチェアは2013年に発売されたプライウッド製のシェルチェアです。
ヴィンテージ品には存在しないシェルチェアです。
でもその昔、構想だけはありました。
イームズ夫妻は実はシェルチェアをプライウッド(成形合板)で作ろうとしていました。
でも当時の技術ではプライウッド製でシェルチェアのカーブを描いた椅子を作ることはできませんでした。
試作品はいくつも残っています。
それが60年以上越しにとうとう実現したのがこのイームズウッドシェルチェアです。
ハーマンミラー社の3D合板技術によって理想が実現されました。
完全にシェルチェアの形を再現していますので技術力の高さがうかがえます。
しかも他のシェルチェアと同じく保証期間5年なのがまたすごいです。
耐荷重も138kgまでOK。
プライウッドシェルチェアはもう、この見た目の素晴らしさで選ぶものでもあります。
クオリティとデザインが逸品です。
木製の椅子としてこの美しさ、座り心地の良さカラーバリエーションの豊富さ、そして値段、どれをとっても優秀です。
そのため、イームズやハーマンミラー社を抜きにしても評価されます。
「木が好き、でもイームズの椅子が欲しい。でもイームズプライウッドチェアはクラシックなデザインすぎて部屋に合わない。」という場合はこのウッドシェルチェアがハマるでしょう。
例えば夫婦で、かたや北欧が好きで木の家具で統一したいという要望があり、かたやイームズが好きでミッドセンチュリーが好きだからシェルチェアが欲しい。
そんなときは間をとってイームズウッドシェルチェアのホワイトアッシュを選ぶとばっちりですよ。
>>イームズウッドシェルチェアのさらに詳しい説明についてはこちらをクリックしてご覧ください。
逆にアーネ・ヤコブセンはイームズのプライウッドチェアを参考にしてアントチェアを作り上げました。
以上、あくまで私の独断と偏見による話でした。
なんか、参考になると良いですね。
座り心地の違いについてですが、素材の硬さにより背もたれの”しなり”が違います。
動画↓に残しましたのでご覧ください。
ハーマンミラー正規品のイームズの家具が欲しいという方は私のお店まで連絡ください。
イームズの専門家です。下記が店舗のHPです。
あとこれ重要です。
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