ミッドセンチュリー(Mid-Century)とは「1世紀の真ん中」という意味です。
それを家具インテリアの業界では20世紀中盤のデザインの呼称として使用しています。
この時期の家具デザインを「ミッドセンチュリーモダン」とも表現します。
「ミッドセンチュリーモダン」はミッドセンチュリー期のデザインをモダンデザインとも呼ぶための名称です。
正確な年数で区切ってはいませんから世紀の真ん中ぐらいはだいたいミッドセンチュリーです。
今回は「ミッドセンチュリーとはなにか?」について書きます。
さらに「ミッドセンチュリー」の”現在の使われ方”についても書きます。間違った知識で”ミッドセンチュリー”を説明しているのが散見されるからです。
(私はミッドセンチュリー系のショップを経営するお店のオーナーですから話の信憑性は高いと思ってもらえたら。)
ミッドセンチュリーの言葉自体は”世紀の真ん中”を意味します
”Mid-Century”ですから、ミッド(真ん中)なセンチュリー(1世紀)ということです。
だいたい40年代~60年代ですね、その辺がミッドセンチュリー(期)です。
第二次世界大戦後に軍用技術を生かして新たに生み出された素晴らしい家具が次々と世に登場した家具デザインの黄金期です。
また、この年代からプラスチック製の量産される椅子が世に登場しました。今まで木材で家具を作るのが当たり前の時代から、新たな素材への取り組みが始まりました。
その木材も成形合板を使った量産家具も流通するようになった時代です。
たまにある質問として「北欧とミッドセンチュリーの違いは?」のようなものがありますが、これは地域と年代を比べているようなものなので正確には比べられないです。
いろいろなミッドセンチュリーがありました
ですから、ミッドセンチュリーはその年代のデザインを総称する呼び方です。
その為、一昔前までは国ごとに呼称を分けるのが一般的でした。
【アメリカンミッドセンチュリー】
【ヨーロピアンミッドセンチュリー】
【スカンジナビアンミッドセンチュリー】
【ジャパニーズミッドセンチュリー】
このようにです。
単純に【世紀の真ん中頃なデザイン】という意味ですが、国ごとに特徴や流れが全然違いますから”どこの”ミッドセンチュリーデザインかが情報として必要でした。
ただ、ミッドセンチュリーデザインのなかでHerman Miller社やKnoll社といった著名な家具デザイナーを抱えるアメリカの家具メーカーを中心としたブームがありました。
デザイナーで言うと、イームズ夫妻やジョージ・ネルソンやエーロ・サーリネンといったアメリカの家具デザインの人気が急激に高まった時期です。
そのブームが日本で1990年代の後半から2000年の前半までありましたので、ミッドセンチュリーはアメリカ感が強かったです。
それがミッドセンチュリーブーム そしてイームズブームです
それによって徐々に【ミッドセンチュリー=アメリカの20世紀中期ごろのデザイン】といった印象となりました。
それが今となっては、ダークトーンの濃い木の色の家具やプラスチック系の椅子があったら”ミッドセンチュリー”と呼ばれることもあり、もはや言葉の意味の原型が無くなっています。
50年代ごろのアメリカの家具は、濃い目の木の色の家具が中心のコーディネートだったのでその印象からでしょう。
プラスチックで出来た椅子はイームズシェルチェアやサーリネンのペデスタルチェア(チューリップチェア)などの印象です。
私も実店舗を経営していて直接お客さんたちと接するのでよくわかるのですが、いわゆる”ミッドセンチュリーブーム”を経験した世代から一周していますし、「ミッドセンチュリー」が何を表す言葉か全然知らない人も増えました。ブームを経験した方は現在30代後半以上ですかね。
ということで正しい「ミッドセンチュリー」の意味は40~60年代の家具を指すデザイン様式のことです
(東京の有名店で2000年初頭に実際に提案されていた光景)
私も経験しているのですが、10年ぐらい前ぐらいまではお店の展示でもイームズシェルチェアにイームズコントラクトテーブル、そこの照明にデンマークのルイスポールセン社の照明PH5やダネーゼのフォルモサを飾って「ミッドセンチュリー」というコーディネートになっていました。(私は今もやってます)
アメリカ、イタリア、デンマークのミッドセンチュリーモダンデザインをまとめてミッドセンチュリーコーディネートです。なぜならどれも年代はミッドセンチュリーだからです。
もちろんそこに柳宗理のバタフライスツールや渡辺力のデザインなども加えていました。
ミッドセンチュリー家具の代表的メーカーといえばハーマンミラー、ノル、フリッツハンセン、ルイスポールセン、カール&ハンセン、レーン、etc.などでしょうか。
ですが、今「ミッドセンチュリー」というと、北欧要素を排除しないと呼ばれないみたいになってしまっている風潮があります。
これは偏り過ぎなので納得しづらいです。いやもちろんどう考えるかは人それぞれですよ。
しかし、第二次世界大戦にてアメリカは軍事技術を生かして家具の製造技術も飛躍的に進歩しました。特にイームズのプライウッド家具はアメリカの家具デザインの幅を広げ特に有名です。
FRPを利用したイームズプラスチックチェアが作られたように、新たなデザインムーブメントが発生した年代のデザイン様式をミッドセンチュリーとカテゴライズするのなら、「ミッドセンチュリー=50年代頃のアメリカの家具」というのは合っています。
でも当時のアメリカはヨーロピアンデザインが主流でしたし北欧のデザインも取り入れていましたから、アメリカの家具だけで揃えたものをミッドセンチュリーと呼ぶのは極端です。
北欧は北欧でミッドセンチュリーとは別ジャンルみたいに扱われていますけど、北欧の20世紀中頃の家具は先述のスカンジナビアンミッドセンチュリーとも表現します。
もしくは北欧モダン、スカンジナビアモダンデザインとも表現します。
余談ですが、”ミッドセンチュリー”という言葉が生まれる前は50年代ごろのアメリカの家具の様式を”アメリカンモダン”と表現していました。ミッドセンチュリーという表現は90年代後半から使われるようになったみたいです。
90年代前半のインテリア雑誌を見るとそうしたことがわかります。
だから”ミッドセンチュリー”という言葉を使わないのであれば”モダン”を使います。アメリカンモダン、イタリアンモダン、フレンチモダンのようにです。
家具コーディネートの幅が狭められているのかも
家具の販売をしていて思うのは北欧だからミッドセンチュリーは無し!のような固定概念により”本当は求めている家具デザインを諦めるケース”を見かけることがもったいないと感じます。
(本当はこの家具が欲しいけど、北欧で統一したいからこれはミッドセンチュリーだからダメだ・・・みたいなことです。)
そもそもイームズのプライウッド家具だってルーツはデンマークのアルヴァ・アアルトだったりします。背景をよく知ると変な先入観を持たずもっと自由にインテリアコーディネートができるはずです。
アーネ・ヤコブセンはイームズのプライウッドチェアを参考にしてアントチェアを作り上げました。
もっと自分の好みを優先すると良い結果になるのではないでしょうか。
言葉の表現は変わるものなので正しく使うことを強制したいわけではなく、もともとは違うんですよという話ですので参考になると良いです。
この記事を書いている私はミッドセンチュリー専門家なのでご興味がある方は下記リンクが私のお店です。
追記:
ミッドセンチュリーのよくある間違いという記事を数年越しで書きました。
コメント
[…] クリアクール 40%ナチュラル 40%ダンディ 20%スッキリしたフォルムのクールな感じと、曲線、木のナチュラル感がよく合います。アクセントにブラックやメタリックを多用することからダンディ要素も含まれます。40〜60年代のインテリアと定義づけられているようです。レトロだけど新しい、個人的にはとても好みです。出展:名作家具とデザインの話(https://ogitaka.com/2017/11/22/mid-century/) […]
[…] クリアクール 40% ナチュラル 40% ダンディ 20%スッキリしたフォルムのクールな感じと、曲線、木のナチュラル感がよく合います。アクセントにブラックやメタリックを多用することからダンディ要素も含まれます。40〜60年代のインテリアと定義づけられているようです。レトロだけど新しい、個人的にはとても好みです。出展:名作家具とデザインの話(https://ogitaka.com/2017/11/22/mid-century/) […]
[…] クリアクール 40% ナチュラル 40% ダンディ 20% スッキリしたフォルムのクールな感じと、曲線 木のナチュラル感がよく合います。 アクセントにブラックやメタリックを多用することから ダンディ要素も含まれます。 40〜60年代のインテリアと定義づけられているようです。 レトロだけど新しい、個人的にはとても好みです。 出展:名作家具とデザインの話(https://ogitaka.com/2017/11/22/mid-century/) […]