– Knit Side Chair –
デザイナー:desertic × case study shop
現代に生まれた名作家具とも言えるデザインです。
イームズシェルチェアのある意味では到達点です
デザーティックとのコラボレーションによって生まれたイームズチェア
この椅子は東京のアパレルブランド「desertic」と「case study shop」と偶然の出会いによって2010年に生まれました。
Desertic(デザーティック)はデザイナーの平武明 氏が2006年にスタートさせてファッションブランドです。
名前の由来は「砂漠的」から来ており、砂漠に代表されるような極地的な環境のもとで
生活する人たちの衣服のイメージをデザインのなかに取り入れています。
deserticにはヴィンテージニットを分解してパッチワーク状に構成するという独特の衣服があります。
それをハーマンミラー社製ヴィンテージイームズシェルチェアのファブリックに使用するという大胆な発想を実現しています。
この椅子は、もともとこの企画があったから作り上げられたのではなく偶然から始まったものです、
case study shopブランドを作り上げたのは私が独立する前に勤めていた会社の社長なのですが、彼のお店にdeserticの平 氏がたまたま訪れたことがきっかけです。
そこで生地を張り替えられたイームズシェルチェアを目にして、これをdeserticのニットで出来たら素晴らしいのではないかと二人が意気投合したそうです。
ですが、ただヴィンテージのニットをシェルチェアに張ったのでは問題が多いゆえに工夫をして作り上げました。
ヴィンテージのニットはそのまま椅子に張るには生地が弱すぎるからです。
そこで裏側に別の丈夫な生地を縫い合わせることにしました。裏打ちという作業はニット全面に均一に赤いステッチをすることで解決しました。これのおかげで表面も保護され人が座っても消耗しづらいという利点もうまれました。
すると生地がぶ厚くなるためシェルチェアの縁のモールにはめ込んで縫い合わせるのが非常に難しくなるのですが、これは職人の技術力で解決しました。モールは通常接着してしまうところが多いのですが、それだとクオリティに難があります。
このニットをシェルチェアに張り込みモールと縫い合わせるというクオリティは現状では真似できる会社は存在しません。
こうして唯一無二のアートのようなイームズシェルチェアが出来上がりました。
すると、このニットチェアの素晴らしさにCOMME des GARÇONS(コムデギャルソン)が目を付けました。
deserticの衣服は、当時COMME des GARÇONSの店舗でセレクトされて販売されていたからです。
こうして日本のみならず、海外のCOMME des GARÇONSでもこの椅子が店頭で展示され販売されることになりました。
誰が見ても感動するこのデザインは、あまりの人気で入荷即日完売を繰り返していたそうです。
しかし、このニットチェアは生産に手間がかかりすぎるため、品切れの状態が常に続いてしまっていました。今でも生産には長期間を要します。
2011年に銀座にドーバーストリートマーケットがオープンした時には、このニットサイドチェアを10台並べてました。それも一週間ほどですべて売約となっていました。私もオープンしてから行ったのですがすでに完売だったので展示光景を見れませんでした。
ニットの柄はヴィンテージ品のために作り上げるごとにランダムです。平 氏の完成によって魅力的なパッチワークが作り上げられています。
使用するのはもちろんですが、飾っておくだけの椅子としても世界で類を見ないレベルの完成度です。
まさにファッションとインテリアの融合であり、ミックスモダンの完成形といえます。
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