アノニマスデザインとは「匿名のデザイン」「作者不詳のデザイン」を意味します。
長い歴史の上で人々による工夫により作者不詳のまま発展してきた実用的なモノをアノニマスデザインと呼びます。
アノニマスデザインは日常的に使われている道具に多くみられます。
例えばクリップ、洗濯バサミ、ホウキ、ネジ、ティーポットなど身近に本当に数多く存在します。
これらの道具は元になったデザインを作った人がいるはずですが、それが長い歴史の中で使いやすいように多くの人々が手を加え続けて今の形に発展しました。
その為に、正確に誰がデザインしたとは特定ができず、使いやすいデザインだけが自然淘汰的に生き残った形が現在のものとなりアノニマスデザインと呼ばれます。
またはデザインされたのがあまりに古すぎてどこの誰が手掛けたか判別不能な場合もアノニマスデザインと表現します。
19世紀の半ばにはジオ・ポンティが作者不詳のデザインを”Design without adjectives”と表現しています。
昔から作者不詳のデザインに注目をしている人たちはいました。
アノニマスデザインという呼び名が”いつ”生まれた言葉なのかは定かではありませんが、日本ではインダストリアルデザイナーの柳 宗理 氏がアノニマスデザインという表現を使ったことから認知されました。
柳 宗理 氏の父親は民芸運動の創始者である柳 宗悦 氏です。
民芸は”機能を追求したデザインこそ美しい”という機能美を提唱している思想です。
装飾されたデザインではなく、人々が使いやすいように作り上げられたデザインこそモダンであると提唱しています。
そして”道具は使われている時が最も美しい”という「用の美」(ようのび)も提唱されています。
この父の影響もあり宗理 氏 自身も無名のデザインに興味を持っており、それらを集めた展示もしていました。
アノニマスデザインは特定のデザイナーが手掛けるプロダクトと違い、用途に合わせて形態を変えて自然と作り上げられるものです。
見た目の美しさを追求するのではなく、道具として人が使いやすいように出来上がります。
優れた機能を持つデザインは見た目にも美しいということですね。
『形は機能をともなう』
この提唱はオーストリアのワイングラスメーカーRIEDEL(リーデル)社の創業者によるものです。
ワインの魅力を最大限に引き出し美味しく飲むための形を追求すると、そのグラスは自然と美しい見た目になるということです。
リーデル社に限らず、機能を持ったものは美しいという製品開発をしている会社は世界各地にあります。
アノニマスデザインから機能美に話がずれましたが、近い存在のため一緒に説明しました。
アノニマスデザインは数えきれないほど存在します。
一度身の回りの物がどんな経緯で作られたか調べてみてください。
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