– Comprehensive Storage System –
デザイナー:George Nelson (ジョージ・ネルソン)
Comprehensive Storage System(コンプレヘンシブストレージシステム)は通称CSSと略されるジョージ・ネルソンの名作家具の中でも最も人気度が高いデザインの一つです。よく”ネルソンCSS”と表現します。
ヴィンテージ市場ではレア度も高いため相場も年々上がってきています。
ネルソンの原点でもある壁面収納
このCSSがハーマンミラー社から発売されたのは1959年のことです。
ネルソン壁面収納の中では最も有名な家具がこちらですが、1956年に同じくネルソンアソシエイツでデザインをしたOMNI System(オムニシステム)と似たコンセプトを持っています。
そもそもネルソンにとって壁面収納というジャンルは重要な存在で、最初に発表したのは1945年のことです。
不鮮明な画像ですが、これは1945年にネルソンが雑誌「LIFE」に発表したStorage Wall(ストレージウォール)という家具です。
この時点でCSSの原型ともなるデザインを発表していました。
少し話はそれますが、このストレージウォールがネルソンとハーマンミラー社を結びつけます。
当時のハーマンミラー社長のD・J・ディプリーは、同社の哲学ともいえるデザイナーであるギルバート・ロードを1944年に亡くしたばかりで、今後のハーマンミラー社を担う人材を探していました。
ディプリーは雑誌LIFEのストレージウォールを見た際に初めてネルソンの名前を知るとともに、彼こそがハーマンミラー社にとってふさわしいと確信します。
まだ無名の地方の小さな家具メーカーであったハーマンミラー社はネルソンへ支払う報酬も苦しいものでしたが、熱心にネルソンを誘い二度目のオファーで了承を得ました。
そうして以後ハーマンミラー社のデザインディレクターとしてネルソンは働くことになります。
(書籍George Nelson P.244)
雑誌で発表したストレージウォールは製品化はせず、その後改良を加え1949年にBasic Storage Components(ベーシックストレージコンポーネンツ)として製品化し、同年ハーマンミラー社にとって初めて作られたニューヨークのショールームで展示されました。通称”ネルソンBSC”。
デザインはアーネスト・ファーマーです。
1954年まで製造されました。
(書籍George Nelson P.79)
それから1956年にOMNI Space Storage System(オムニスペースストレージシステム)をネルソンアソシエイツで作り上げ、1957年に最も有名なComprehensive Storage Systemがデザインされます。発売は1959年から始まり1973年まで続くロングセラーとなりました。
そしてこれが最後の壁面収納となっています。
(ハーマンミラー米国本社工場グリーンハウスでの光景)
ネルソンにとって壁面収納はハーマンミラー社との出会いでもあり、彼の思考やデザインセンスが具現化した家具とも言えます。未来の住宅事情、オフィス事情を見越した先見の明があるデザインでした。
ミッドセンチュリー期のヴィンテージ家具コレクターの中では評判も高いデザインです。
ネルソンの名作家具として現在も探している人は多くいます。
ちょうど先日もこのネルソンCSSを探している方から連絡があり発見に協力しました。ご本人も満足されてよかったです。
ちなみに、ネルソンCSSには米国製、日本製、そしてヨーロッパ製造の物が存在します。
製造国が結構重要ですので、それぞれの製造国で価値が全然違います。
最も価値があるのは米国製造のヴィンテージ品です。それに比べて日本製のCSSは段違いに市場価格が下がりますので注意してください。
一口にブラジリアンローズウッドだといっても日本製というだけで全く値段が低くなりますから、ヴィンテージのCSSを購入する際には米国製か日本製かなど確実じゃないと怖いですよ。
いや本当に米国製に比べて日本製はものすごい価格が下がりますから、日本製を米国製造のCSSだと勘違いして買ったらとんでもないことになります。
「米国製じゃないですかね?」と売る側が曖昧な回答をしているようだと怪しいですので、ちゃんと米国製かどうか説明なり証拠をだせるなりをさせてください。
本当に日本製造のCSSだと安くなりますからね、米国製造よりちょっと安いぐらいの値段差じゃないです。
鑑定できる人は日本に僅かしか存在しません。
私は所有している資料を見ながらなら判断できそうですが、ヨーロッパ製造の方はちょっと自信がないです。
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