20世紀を代表する椅子の一つがイームズ夫妻によりデザインされた「イームズシェルチェア」です。
シェルチェアといえば、”軽量かつ安価で量産ができる”という理念とともに製造された流通していました。
ハーマンミラー社ではシェルチェアの製造販売を80年代末に終了して、それから90年代後半にポリプロピレン製に素材を変更してヴィトラ社から製造されるようになりました。
現在ではハーマンミラー社でも2010年頃にポリプロピレン製でシェルチェアの正規品を復刻製造して、上写真のエッフェルベースが付いたDSRを¥45,000 ~ 47,000(税別)※2020年1月現在で販売しています。
この”軽量かつ安価”という文言を読んだ人が、「ハーマンミラー社の正規品は4万円もする!全然安価じゃない!ブランドに胡坐を書いて不当に高くしている!」と主張しているのをネット上で見たことがあります。
現実で言っている人も見たことあります。
そこまで意地悪な言い方じゃなくても、「昔は安価が売りだったのにいまは高いね。」と私のお客さんから言われることもあります。(悪気はないです)
これは誤解です。
イームズシェルチェアは現代でも安価で量産できる優れたチェアです。
ちょっとこれ見てください。
国内の某有名スチールメーカーのカタログです。
わりとどこでも見かけるような何の変哲もない椅子たちじゃないですか?商業施設や会社内で普通にいくらでも置いてあるようなものです。
価格を見てください。数万円はザラにします。
本来椅子はこのぐらいはするものなのです。
それなりのクオリティの家具を作るとコストがかかるものです。この家具業界でこのレベルの椅子は安価なジャンルに分類されます。
「シェルチェアは安価じゃない!」と比較している先がホームセンターや〇ケアといった、究極に安い家具価格帯ですのでそれはシェルチェアが高く見えますよ。見た目は同じ椅子ですが、椅子同士で同じ土俵に乗っている製品ではありません。
模倣品なんか安い理由はモラルやルールを無視しているわけですから、そりゃあ安くできますよ。
自転車業界でも「ママチャリは最低3万円から」といった話もあるじゃないですか。
ちゃんと自転車として安心して信用できるブランドの自転車だったらむしろ3万円でも安いぐらいだという目安です。
ホームセンターに行けば数千円から自転車がありますが、ああいったものは安全性や保証の問題があります。
椅子も安全性、テスト、耐久性、塗装や素材の安全性などを求めていくと、普通に1脚数万円になります。決してボッている※わけではありません。※ぼったくりの意味
企業努力で超大量生産が出来れば確かに安くはできるのでしょうが、それとイームズシェルチェアは同列にはなりません。
ハーマンミラー社のイームズシェルチェアはこのような特徴があります。
デザイナー側※にライセンス料が支払われている ※イームズオフィス
耐荷重が138kgまでOK 耐久テスト済み
塗装や素材が人体に悪影響を与えない
製造するのに環境を破壊しない
検品や仕上げの良さ
社員に健全な給与の支払い
保証期間5年
デザインの価値を広める企業の社会的責任
なにより正規メーカーとしてデザインセンス、カラーセンスがずば抜けています。
などなど多くの優れた部分があります。
もうこれだけのクオリティで4万円なのはすごいお値打ちな家具なんです。
さらに日本に届く配送料とかもかかっているわけですし。(米国でも$340以上しますから内外価格差はほとんどありません。)
ただ安いだけの家具とは違って、”ちゃんとした家具として”はイームズシェルチェアは現在も安価で量産できる優秀な椅子です。
安く作れる家具は”安く作っている”ということでもあります。
どこかで誰かが犠牲になっているとか、お金の流れが不穏なところにいっているかもしれませんよ。
最後に、正規メーカーはライセンス料をデザイナー側に支払っています。
リプロダクトとかジェネリックとか呼ばれる模倣品の販売ページには、ライセンスが切れているとか、意匠権が切れているとか書かれていますが、書いている本人もよくわかっていないでしょうね。
正規メーカーはどうしてライセンス料を払う必要があるのか考えてもらえると良いです。
追記
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