この特徴的なデザインのラウンジチェアは「ウームチェア(Womb Chair)」です。
“ウーム”は”子宮”という意味です。まるで女性の子宮の中にいた時のような包まれる安心感を体現した回帰をモチーフにしたデザインです。
この椅子がデザインされたのは1948年です。デザイナーはエーロ・サーリネン。
当時も今も米国のKnoll社によって正規品が製造販売されています。
超名作椅子として60年以上も愛される椅子の一つですね。
このウームチェアは完成形の至るまでにいくつかの試作品を経ています
まずこれはクランブルックアーカイブに保存されている画像です。
ファブリックを張りぐるみした座面ではなく、成形合板(プライウッド)をそのまま活かしたデザインとなっています。
見えませんが、座る部分の表側はウレタンとファブリックが貼っております。
脚の先のグライズが大きくてかわいいです。
こちらもクランブルックアーカイブのものです。
こちらの試作品は背と座は現在のウームチェアに近づいていますが、脚がヘアピンのようなレッグになっています。
この年代はこういった”ヘアピンレッグ”構造の家具はいくつか存在しました。
こうした試作品があったんです。
そもそもウームチェアはどういった経緯でデザインされるようになったのか
それは1940年代の話です。
エーロはKnoll社にて最初のデザインである「グラスホッパーチェア」の完成後に、フローレンス・ノルとともに新しい椅子のシリーズを議論していました。
フローレンス・ノルは「クッションを使用したバスケットのような座り心地の椅子」という要望をエーロに伝えます。
それにエーロは3つだけ提案をしました。珍しい行動にフローレンスは驚きます。
なぜならエーロは当時、何百も提案をするということで知られたデザイナーだったからです。
そのエーロが厳選した提案を3つだけです。
その3つが70シリーズです。
肘掛のある71アームチェア(71 Arm Chair)
肘掛のない72サイドチェア(72 Side Chair)
そして73ラウンジチェア(73 Lounge Chair)
これが後のウームチェアという名称を付けられリリースされました。
71と72も製造販売されることになり現在もKnoll社にて製造されています。
さらにその後、二人掛けのソファに改良したウームセッティ(Womb Settee)もリリースされますが、わずか3年間の製造で終了しました。
ですが2016年よりKnoll社にて正式に復刻されました。
ウームチェアは今も昔も最上のラウンジチェアの一つとして君臨しています。スモールサイズもあるので、対角に合わせてウームチェアを選択することが出来ます。
くつろぎを求めた至上の逸品です。
コメント