– Junior –
デザイナー: Angelo Mangiarotti (アンジェロ・マンジャロッティ)
イタリアの建築家アンジェロ・マンジャロッティが1966年にモジュール式の木製組み立て家具「Junior」シリーズをデザインしました。
組み立て式家具の中で「名作家具」と呼んで良いほど出来たデザインでした。
そんな名作が正規復刻されたことがあるのですが現在は終了しています。
すごく良い家具だったので思い出話です。
マンジャロッティの建築的構造デザインが凝縮された家具
ジュニアシリーズは合板を組み合わせて作られる汎用性の高い家具シリーズでした。
ヴィンテージでは上写真のようにかなりのバリエーションが存在し、シェルフ、テーブル、椅子と空間におけるほぼ全ての家具が用意できました。
カザルーチ社にて製品として発売されその卓越したデザインセンスから評価を得ていたのですが、同社が廃業したために製造も終了しました。
生産終了後にもマンジャロッティ側に何社か家具メーカーが復刻のアプローチをしたらいいのですが、クオリティや価格の面でうまくいかずに実現することはありませんでした。
その為、長らくジュニアシリーズはヴィンテージ市場にだけ存在する知る人ぞ知る家具とされてきました。
そんなジュニアに目を付けたのが日本の㈱メトロポリタンギャラリーです。
ミラノのヴィンテージ市場でジュニアを見つけた時に”復刻するべき家具”と確信をもち、アンジェロ・マンジャロッティ事務所にコンタクトを取り同事務所協力のもと2013年に正式に復刻製造されることなりました。
クオリティと価格を実現するために日本で製造し、現代に合わせて強度の改善やサイズ調整も行うことで、質が高いながらも価格が抑えられた優れた復刻品となりました。
発売当時は私も自分の店で販売をしていてすごく気に入っていました。
良い家具だったんですよ。
マンジャロッティの構造的センスが光るデザインをしています。
合板を互いに組み合わせるだけで一旦完成する簡単さが売りでした。
クロスさせた合板を立たせたらシェルフの出来上がりです。
ただこれだとグラグラ揺れすぎますし、何より板がスライドして落ちる可能性があります。
そこで凹型のパーツを板同士クロスさせた中央部にはめ込みます。
これにより板同士が分解することは無く、ある程度安定した強度を保つことが出来ます。
完成するとこんな感じです。
ミニマルでありながらところどころにデザインセンスが光るマンジャロッティの建築を小さくしたような素晴らしい家具です。
販売当時は好評でしたが発売から3年後の2016年に製造を終了するという短さでした。
マンジャロッティが2012年に亡くなったこともあり、その関係でマンジャロッティ事務所が解散したことも関係するみたいです。
そうして惜しまれつつ終了を迎えました。
ライセンス無視してやっても良かったのでしょうが、それはさすがに良心的にはやれないですよね。
この家具は優れた名作家具と呼んで差し支えないです。
イタリアンモダンデザインの傑作の一つです。
少ない素材で構造的に完成しており、組み立てと分解ができることで倉庫のスペースをとらず出荷や搬入も簡単です。
やはり製造コストや倉庫、搬入まで考えられたデザインこそが素晴らしい家具です。
今のオンライン全盛期の時代にあったらもっと売れるでしょうね。すごくネットショップ向きです。
私は在庫から展示品まですべて売り切りましたので残っていませんが、いまでもあったら良いなと思っている家具です。復活しないですかね。
と言いつつ、実は椅子と6段チェストだけは所有しているんですよ。保存用にです。
これは㈱メトロポリタンギャラリーの社長から直接『この2種類はマンジャロッティの意志がある家具だからオギソ(私)さんには持っておいてほしい』と言われたからです。
だからこのまま保存しておきます。什器として使うことがあるかもしれませんね。
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