これはアーネ・ヤコブセン※が1952年にデザインをしたアントチェアですね。※デザインは諸説あります
よくアントチェアは「世界初の背と座を一体の3次元成形合板を実現した椅子」と説明されています。
これ実は違います。
それでは3次元成形合板と説明すると後のセブンチェアのような凹凸状のカーブを描いたデザインを彷彿とさせますので、一旦ここは「アントチェアは世界初の背と座を合板で一体成型した椅子」と呼び方を変えましょう。
それでも違います。
1874年にガードナーが製造した背と座が一体になった成形合板製の椅子が存在します。
だからアントチェアは世界初ではありません。
その話に関連して、よく第二次世界大戦により成形合板という新しい技術が生まれイームズ夫妻のプライウッドチェアが作られたと解説しているケースも見ますがこれも誤りです。
成形合板は先述の通り19世紀からありますし、戦争前から成形合板製の椅子は普通に存在しました。
しかし条件を付けるとアントチェアは世界初になります。
その条件は「フレーム類を使わずにプライウッド一枚のみで背と座を一体成型して量産された椅子」とすることです。
これなら世界初と言えると思います
「量産」とするのは、フレーム無しで一枚の成形合板で背と座が作られた椅子はもっと以前からあるからです。
だからよくあるアントチェアの説明文は不十分ということですね。
そもそもアルヴァ・アアルトの時点で一体成型した3次元の合板ですから、アントチェアの説明に疑問を持たないほうがおかしい気もします。
世の中の家具・インテリア本もこれについては誤って書いているケースを見かけますし、ネットや動画も当然誤った知識で解説がされています。
家具の情報についてはまた聞きのまた聞きで伝言ゲーム状態ですから、どこかで見た情報を自己の情報として発信されており情報の劣化が激しいです。
家具デザインの情報は書いてあることを鵜呑みにせず、自分でオリジナルの情報を探す方が楽しいですよ。
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