– MR Chair –
デザイナー:Ludwig Mies van der Rohe (ルードヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ)
バルセロナチェアで有名なミースの名作椅子の一つです。
そのバルセロナチェアより以前にデザインされた初期ミースの名作でもあり、彼の名を広めたきっかけともなる博覧会でも展示されたスチールパイプ製椅子の傑作です。
ミースのカンティレバー椅子
スチールパイプにカンティレバー(片持ち構造)構造はマルト・スタムやマルセル・ブロイヤーに代表されるように、当時のドイツでは最新のデザイン構造でした。
ブロイヤーが「ワシリーラウンジチェア」や「ラッチオテーブル」のように直線的なデザインをしていたのに対して、ミースのMRチェアは脚が大きく縦にアーチ形となっています。
これが構造としてスプリングの役割も持っています。
座ってみるとけっこう”しなり”ます。正直ちょっと不安なぐらいです。グワングワンと動きます。
でも大丈夫です。頑丈なので長く使えます。張地は牛革を使っているのが通常です。
このスチールパイプ製の椅子はバウハウス仲間のブロイヤーの影響を受けています。
よく聞くデザインストーリーとしてあるのが「19世紀の鉄製ロッキングチェアの別解釈」というものです。
言われてみるとそんなように見えます。横から縦にした感じです。
(後姿のアミアミがエレガントです。)
1927年にドイツのシュッツガルトでヴァイセンホーフ住宅博覧会で開催された際にミースも住宅を設計して出展をしました。
そこでこのMRチェアも展示して披露されました。
同年にはベルリンの「Velvet and Silk Cafe」の内装を手掛けたみたいですが、そこでもこのMRチェアを使っています。
どちらで先に世間にお披露目したのかはわかりません。
ヴァイセンホーフ住宅博覧会は当時13歳だったハンス・ノルと父のウォルター・ノルも来ており、彼らの後に大きな影響を与えたそうです。
それから20年後にはミースのデザインをアメリカでハンスが創業したKnollで正規生産されることになるとは面白いものですね。
なにせミースにしてみたら、この博覧会で13歳の子供を見かけてもそれが将来のパートナーとは絶対に思わないでしょうから。
そしてこの住宅博覧会には当時近代建築歴史に残る建築グループが参加しており、インターナショナルスタイルと呼ばれる建築様式の始まりともなっています。
ミース自身もここから代表的建築家としての地位を手に入れます。
現在MRチェアの正規品は米国KNoll社が正規製造しています。ミース自身による許可によるものです。
ただ同じKnollでも米国製、伊国製、日本製がありますので少し複雑です。
ちなみに1971年にブロイヤーはMRチェアの脚を直角構造にした「スポレットチェア」というものをデザインしています。これまんまなんですよね。こちらも現在製造販売されています。
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