たまに聞かれます。
「一番好きな椅子はなんですか?」
のような質問です。
難しいですね・・・
あなたにとっての1脚とはなんでしょうか?
この業界に入ったきっかけは以前もここで書きましたが椅子の本です。
この時は家具のデザイン自体も何にも知らない状態だったので、いろいろな椅子を見ては何でも興味を持って感動していました。
”ウェグナーの椅子格好良い!”とか”チャーナーチェアすてき!”とか。
まあ見た目だけ見て判断していただけなので詳しいことまでは知りませんでした。
というかその時は家具の知識が無さ過ぎてどうやってこの業界で働くかもわかっていなかったので、その辺のインテリアショップみたいなところで店員をしていただけなので何にも知りません。(以前の職場のことではないです。)
そんな名作椅子たちの中で、特に目を奪われたのがイームズラウンジチェアやマシュマロソファやイームズシェルチェアのようなミッドセンチュリーモダンのデザインです。
それでミッドセンチュリー系のショップに勤めたという経緯があります。
だから特に好きな椅子といったらミッドセンチュリー期の椅子です。
けど、それからもっと多くの椅子を見ることになります。するとマニアックな椅子から希少な椅子から、あまり人が知らないような椅子に興味を持っていき、こうしたレアものを知っていること自体が価値みたいに勘違いをしていた時期があります。所有もしていないし背景も知らないのに。
で、今はどうかというと、一周して一番好きな椅子は・・・「イームズプライウッドチェア」ですかね。
シェルチェアとも悩んだのですが、どっちかといったらプライウッドチェアの方かなと。
いま私は独立開業して家具の販売をしているので、その辺は家具収集家とは違った意見となると思います。
家具の販売自体を仕事にすることで、もっともっと深く業界に入りストーリーや成り立ちなど様々な情報を経ていくと、やっぱりイームズ夫妻の家具はすごいなと感じるわけなんです。
家具に興味があれば誰でも知っているような椅子かもしれませんが、玄人向けのようなデザインを一番好きなデザインとしてあげるのが正しいとも思いません。
構造的にも優れていますし、未だにセールスが続いて結果を出せる名作という点でもイームズプライウッドチェアは素晴らしいです。
逆に私は家具を知りたての時はイームズプライウッドチェアの良さはわかりませんでした。もしかしたらある程度デザインに興味を持った人が惹かれる椅子なのかもしれませんね。
ということで、私が一番好きな椅子はイームズプライウッドチェアです。
もちろん今はの話なので、この先はわかりませんけどね。
もし『結局イームズかよ!』とネガティブに思うような人がいたら別のジャンルで例えて考えてもらえばわかりやすいですよ。
そんな風に思う人がいるのかって話ですが、いるんですよ。マジで。
『イームズは卒業した』とか『イームズは前好きだったけどね、今は○○が~』とか『まだイームズレベルか』とか。
だいたいそうした人たちに限ってよく知りもしないのにイームズの家具を初心者扱いして、マイナーなジャンルのヴィンテージ家具を集めているような人なんです。で、ヴィンテージ家具を集めているのをなぜか立場が偉い人と勘違いしているんですよね。
中にはありがたくないことにわざわざ私のお店に来て『ここの家具は興味ない』とか言いながらコレクション自慢をしてきたりします。私も興味がない。
というか、自慢されるようなものじゃないんですよ。本人は偉そうなのですが、こっちからすると、あ、そうっすか程度のものなんです。それをスマホの画面で見せびらかされてもどうしろと。
それで他のジャンルの例えですが・・・そうですね、じゃあJAZZにしましょうか。
マイルス・デイビスはもっとも有名なトランぺッターですし、JAZZ入門としても扱われるぐらいの名盤をリリースしていますが、だからといって初心者だけが聞く楽曲ではないですよね。
それで『まだマイルス・デイビスなんて聞いてるの』とか言おうものならとんでもない勘違い発言です。どれだけ「帝王を帝王たらしめているもの※」をわかっているのか。
※マイルス・デイビス研究の第一人者とも言われる医者の小川 隆夫氏の言葉を借りました。彼のラジオを毎週聞いていましけど終わって残念です。
同じくイームズのデザインも入門としてスタンダードとして扱われることもありますが、突き詰めて掘り下げていくと終わりがないぐらいの話や歴史があります。それらを知っていたら決して軽くは扱えません。
いろいろ見て深く知るほどに魅力がさらにわかるものもありますよ。
あなたが一番好きな椅子はなんでしょうか?
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