このあいだ、近所の人に誘われてビジネス会みたいなものに行ってきました。
基本的に私は会とか人が集まる場所には行かないですし人の誘いにのることもほとんどないので珍しいことをしましたよ。
その感想はいいのですが、会が終わった時もしばらく残って名刺交換や挨拶を求められたので何人もしつつ雑談をしていました。
もちろん私はハーマンミラーの正規販売店でもある店をやっているという自己紹介は皆の前でしていますが、そのうちの一人にこんな風に言われました
堂々と正規品批判をする
『ハーマンミラー、知ってますよ。
このあいだうちの会社の○○(名前?)がワイヤーみたいなイームズの椅子あるじゃないですか、あれをわざわざハーマンミラーのを買うなんて馬鹿なことをしていたんですよ 笑
あんなもの特許も切れてるし正規品なんて存在しないのにね 笑
イームズはデザイナーの物でしょ。それをハーマンミラーが勝手に正規なんて言っているだけですよね。』
と誇らしげに話してくれました。
よくもまあハーマンミラーの正規販売店をやっている人間の前でこんな主張をしに来るなと思いました。
別にハーマンミラーとイームズの知識があろうがなかろうが、価値を分かっていようが知らなかろうが別に構いません。価値観の相違というのも構いません。
わざわざそれを商売にしている人の前に来てアピールする必要はありませんよね。「バカみたいなものを売っているやつでしょあなた」なんて物事を決めてかかり人の商売を初対面でいきなり貶しているわけですから。
隣に居た私をこの会へ誘ってくれた人はハーマンミラー製品を私から買ってくれている人なわけですから、そちらに対してもものすごい失礼です。
あまり会話したくなかったので「ハーマンミラー社は正規品ですよ。」とだけ話しました。
すると『だってインターネットで書いてありましたよ。正規品は存在しないからハーマンミラーが勝手に正規品だって言っているだけだって。それが間違っているというんですか!』なんて話してきたので、私は「間違っていますよ」とぶっきらぼうに答えました。
やっと雰囲気を察したのか『あ、じゃあ今度お店遊びに行きますね』とか言って離れていきましたが、そんな人にお店に来てもらったら馬鹿にされるだけなので来て欲しくないなと思いました。
インターネットでの情報収集が当たり前になり、変な情報や問題のある情報を鵜呑みにしてしまう人がいるんだなぁと久々に実感しました。
さて、長々とその時の話題を書いたのですが、『ハーマンミラーも正規品じゃ無いぐらいまで説明しているサイトなんか今もあるのかな、あの人はどんなサイトを見たのかな。』ということでググってみました。
探してみると・・・確かにありますね。
文章はそのまま引用したくないのでこんなような感じで説明しているサイトがいくつかありました。
「デザインの特許権が切れたデザイナーズ家具に偽物は存在しない」
「ハーマンミラーもリプロダクトです。正規メーカーは存在しません」
「イームズは特許が切れたので誰が製造販売しても問題ない」
「イームズはブランドです」
うーん、良くない表現をしていますね。
一個づつ感想を書いていきます。
「デザインの特許権が切れたデザイナーズ家具に偽物は存在しない」
これはミスリードですね。わざとやっているのなら悪質ですが、おおかた特許も意匠もなにも理解してないのに特許権とか書いておけばそれっぽいだろうぐらいしか知識が無い人が書いたのでしょう。
家具のデザインに特許とは意味がわかりません。文章の整合性がとれていません。特許は科学的な技術や根拠に基づく発明です。
意匠権のことを言いたいのかもしれませんが、意匠は特許ではありません。別物です。
だからデザインに特許権は関係のない言葉を繫げていますから切れているもなにも、そもそも存在しません。
ちなみにアメリカはデザインも特許法で保護されますので、デザイン特許という呼び方があります。ただしここは日本ですので特許は特許、意匠は意匠です。
この話を突き詰めると「犯罪じゃなければ何をやっても良い」という結論にたどり着くことになります。保護できないものを盗んでも構わないということです。
「ハーマンミラーもリプロダクトです。正規メーカーは存在しません」
むしろハーマンミラーが真のリプロダクトですよ。
この説明でもしていますが、本来のリプロダクトは正規メーカーが製造した復刻品を意味する言葉です。
だからハーマンミラーがリプロダクトという説明自体はあっていますが、これも誤解をさせるためにわざとリプロダクトを使っています。この説明をしている人は意匠権が切れたなになにの模倣した家具のことをリプロダクトだと認識したうえでハーマンミラーと同じグループに入れています。
正規メーカーは存在します。なにを持って正規かですが、イームズという商標を使い、チャールズ・イームズの孫が代表を務めるイームズオフィスの協力と認可とともに製品開発をして復刻したデザインをハーマンミラー社にて製造され、イームズオフィスにライセンス料も払っている物は正規品と言えますよね。
「イームズは特許が切れたので誰が製造販売しても問題ない」
イームズの特許って・・・だから特許とはなんですかね。
イームズは人名ですからね。イームズ夫妻ですよ。特許とか関係ありません。
問題ないわけないです。
そして”イームズ”は商標で保護されていますので、それを勝手に使って商売するのは商標権の侵害です。
「イームズはブランドです」
違うでしょ。
あとブランドだったら商標で保護されている”イームズ”を使うのがまずいです。
こうした説明を見て「ハーマンミラーは正規品じゃ無いし、正規メーカーは無いからリプロ品を買うのが良いんだ!」と信じ込んだんでしょうね。
うーん、インターネットの情報は疑ってかかるのが良いと思います。言ったもん勝ちみたいなもんですしね。書いている人も良く分かっていないのに書いているケースも散見されます。
そういえば、たまに正規品を目の敵にしている人がいますよね。この仕事をしているとなぜかそうしたケースに遭遇することがあります。
正規品が存在するとなぜ困るのか。
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