長いあいだ作り続けられ時代を超えても愛される名作家具。
同じデザインが世代を超えても人々から求められています。
そんな後の名作家具をデザインした一人チャールズ&レイ・イームズ夫妻の家具たちのほとんどはハーマンミラー社から製造販売されました。
イームズ夫妻とハーマンミラー社のパートナシップは1940年代からあります。
そんな彼らの家具のいくつかは、50年代の発売時から途切れることなく同社が製造販売し続けているものがあります。
イームズラウンジチェア、イームズプライウッドチェア、イームズアルミナムグループチェア、イームズコントラクトベーステーブルなどなどですね。
これらの名作家具たちは、発売当時から同じデザインで製造され続けていますが実は細部は少しづつ変わっています。
例えばイームズラウンジチェア(ELO)ですが、成形合板(プライウッド)の積層枚数が50年代当初のもより増えています。
年ごとに増えていますので、現在の新品現行品が最も分厚い合板になっています。
また、オリジナルのELOは木材部分にブラジリアンローズウッドを使っていましたが、ワシントン条約により規制されたことで木材部分を変更し、現代ではオリジナルにはなかったホワイトアッシュやエボニーカラーといったバリエーションが選択できます。
さらにトールサイズなんてバリエーションも発売されています。
トールは明らかに形を変えたことでオリジナルラウンジチェアとは違ったものとなっていますね。
コントラクトベーステーブルは天板裏にナットはもともと入っていませんでしたが、現在はナットを入れることで組み立ての簡単さを上げて、さらに強度も増しています。
グライズも変更されていますね。
支柱(コラム)を白に選択できるようになったのは現代のシーンに合わせて使いされたカラーです。※米国製造品のみです
アルミナムチェアはベースを5本に分かれた5スターベースにすることで安定感を増したり、ガス圧シリンダー昇降機能を追加したりしています。
このように、基本のデザインはそのままで、時代に合わせて変化している部分、耐久性を上げるために変えた部分、製造上の都合で変えた素材など、表向きにはわかりづらい部分は時代ごとに違います。
つまり、見た目は同じ家具でもオリジナルデザインとは僅かづつですが違ったものになっています。
それこそイームズプラスチックチェアは復刻に当たり素材を全く変えてポリプロピレン製にしてショックマウント方式を辞めたり、イームズソファコンパクトに関しては折りたたみ出来ないようにしたり、過去には全く存在しないファブリックやカラーを製品化したりしています。
こうした変更についてデザイナーの了承はとれていません。
そりゃそうですよね、だってイームズ夫妻は両名とも既に亡くなっています。許可を取りようがありません。
変更や製品化に関してはチャールズ・イームズの孫のディミトリアスが代表を務めるイームズオフィスとハーマンミラー社とで決定されています。
イームズ夫妻本人の了承をとらずに変更されている現行品に対して、『私はデザイナー自身が作り上げたオリジナルが欲しいからヴィンテージ品を求める!』という強い意志を持つ方もいらっしゃいます。
しかし、ことイームズ夫妻については、デザイナー本人の了承をとらずに変えていくことでオリジナルとは違ったものにすることはOKなんです。
チャールズ・イームズは存命中に『それが良くなるのなら変えるべき』という言葉を残しています。
存命中から彼は自分の手掛けたものを変えられることについて、”良くなるならそれでOK”という考えを持っていました。
だから、”自分のデザインは絶対に変えられたくない!”という思想の持ち主では無かったので、後で変えられることについては寛容だったんです。
こういったことから、良かれと思って変えられた現行品の仕様についてはイームズ本人の考えからすると本人の意思を尊重しているということです。
だからオリジナルデザインとは違ったものになったとしても、それもイームズ夫妻によるデザインということですね。
それもこれも40年代当時から製造を続けるハーマンミラー社だからこそではあるかもしれません。
もし他社が製品の復刻を手掛けた場合、それはライセンス品となりますからちょっと事情が違う気もしますが、その辺の解釈はみなさんにお任せします。
これからもまた変更される部分が出てくるでしょうから、未来には同じイームズラウンジチェアでもまったく異なった構造になっているかもしれませんね。
名作家具は数多く存在しますから、デザイナーごとに思想も違いますから今回の話はあくまでイームズ夫妻の家具に関してということで。
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