– Tugendhat Chair –
デザイナー:Ludwig Mies van der Rohe (ルードヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ)
先日まで東京・青山のKnoll Japan Showroomにて開催されていた「Knoll celebrates Bauhaus ミース・ファン・デル・ローエとマルセル・ブロイヤー」展 ― 織田コレクションより―のレポートを書きましたが、その際に上写真に写る手前の白い椅子が何かを個人的に尋ねられました。せっかくなのでここで更新します。
この一見するとミース・ファン・デル・ローエの名作椅子「バルセロナチェア」ですが、よく見なくても脚が全然違います。バウハウスを感じる脚がカンティレバー構造(片持ち式構造)になっていることが特徴です。
どちらの椅子もミースがデザインをしたものです。
バルセロナチェアは有名ですが、こちらは知名度が低いしょうか。
白い方の椅子は「トュウゲンハットチェア」という名前です。
ある邸宅のためにデザインされた椅子
(Daniel Fišer (-df-) – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2039677による)
「トュウゲンハットチェア」は「トュウゲンハット邸」のためにデザインされた椅子です。
1928年に実業家のフリッツ・トュウゲントハットからミースへ自宅設計の依頼がありチェコスロバキアに建築されました。1930年竣工。
後にミースの代表作の一つもなる平面の概念を変えた傑作建築ともなり、モダニズム建築のアイコンともなりました。そして世帯主の名前をとり「トュウゲンハット邸」と呼ばれるようになります。
ミースはこの邸宅のために椅子を二つデザインしており、一つがこの「トュゲンハットチェア」と、まだこのサイトでは紹介していません「ブルーノチェア」※です。両方ともカンティレバー構造をした椅子です。邸宅より前の1929年にどちらもデザインされています。
※追記:間違えました、チューブラーチェアでした。
トュウゲンハットチェアはバルセロナチェアの背と座をそのまま活かしたデザインになっています。
フレームと脚違いの兄弟デザインと呼んで良いですよね。
デザイン順的にはブルーノチェアのカンティレバー構造を踏襲したうえで、バルセロナチェアを組み合わせたものがトュウゲンハットチェアです。
製品化はバルセロナチェアと同じで最初にヨーゼフ・ミュラーのスタジオで製造販売され、その後1948年にアメリカのKnoll社が正式にライセンスを取得して製造販売をしています。
過去にはアーム付きのトュウゲンハットも発売しました。
2007年ぐらいまでのKnollカタログには掲載されているのですが、いつ製造が終了したのかは私も覚えていません。いつのまにかラインナップから無くなっていました。
背面から比べると面白いです。
手前のバルセロナチェアはレザーベルトを縦に固定して、奥のトュウゲンハットチェアはレザーベルトが横です。
こういったあえて対照ともなっている構造が粋でもあります。
あと日本語表記が曖昧です。
アルファベット表記はTugendhat Chairのため、「トューゲンハットチェア」でも「トゥゲンハットチェア」でも「トゥーゲンハットチェア」でもどれでも良いです。
このサイトでは昔からの呼び方である「トュウゲンハットチェア」で統一しています。
少し人とは違ったモダン家具の傑作としてバルセロナチェア以外の選択肢として良い椅子ですよ。間違いなくこれも名作椅子です。
むかーし座ったことがありますが、基本的にはバルセロナチェアの角度違いといった感じです。だからもちろん心地良い満足感のある座り心地ですよ。
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