Knoll社のアイコン的デザインの一つ、エーロ・サーリネンがデザインしたチューリップチェアたち、もとい、ペデスタルファニチャーシリーズです。1956年作。
このシリーズなんですが、問題解決のためのデザインでもあるんです。
その問題とは。
” 椅子の脚は多すぎではないだろうか? ”
エーロが考えた椅子の問題は”椅子の脚が多すぎるのではないか”というものです。
エーロはこう言っています。
「椅子の脚は4本もあるし、角度も付いている。脚のレベルでみれば、ひどい混乱状態だ」
テーブルに椅子を4台合わせると、テーブルの脚が4本、椅子の脚が4本×4。その場に脚が20本。
この状態をエーロは”スラム”と表現しているぐらいです。
1953年にエーロの大学時代の親友で銀行家のアーウィン・ミラーの自邸の設計を請け負い、この家の家具デザインをすることになったのが、これを考えるきっかけになりました。
そして、「行きつくところは一本脚である」ということで当時まだ新しい素材のFRPを使用してデザインされたのがこのペデスタルシリーズです。テーブルも椅子もスツールも一本脚。
エーロ的には椅子の背から座から脚まで単一の素材で作りたかったみたいですが、当時の技術ではFRP一体成型でこのデザインは強度的に不可能でした。
座と脚を繫ぐ部分が折れちゃうんです。
そこで、その部分を切り離して脚の部分はアルミ鋳物にしました。
そのおかげでスイベル(回転式)仕様を作ったりできるようになりましたね。
Knollのデザイナーであるドン・ペティットが一年間エーロの事務所に出向して開発が進められ、1955年にモックアップが完成して、1956年に製品化されました。
このペデスタルシリーズについてエーロは、「特殊な形を殊更に考えたのではなく、ただ室内の状態について考えた結果なのである。」と話しています。
こうして椅子とテーブルの脚もとをみるとエーロの主張がわかります。一本脚が並んでいる光景はスッキリとしてエレガントです。まるで柱が並んでいるようですね。
エーロは建築についての哲学と同様、家具についても哲学を持っていました。
「もし、椅子に問題を発見した場合、その解決方法は椅子とかかわりのある室内にある。」とも語っています。
近未来的なイメージが先行するこのペデスタル、チューリップチェアですが、実際は未来とかそんなのをイメージしたわけじゃないんですよ。
コメント