「修理する権利」という言葉をご存知でしょうか。
「修理する権利」とは、メーカーの製品をメーカーや指定の業者を通さず、消費者自身が修理できるようにすることです。
通常、メーカーの製品はメーカーが修理、あるいはメーカーが指定した業者での修理となりますが、それを消費者自身が好きな修理場所を選び、メーカーと関係ない業者でも修理ができるようにすることですので、消費者にとってはメーカーの独占的な修理しか選択肢が存在しないことで「修理するより買ったほうが安い」といった事例を回避することが出来ます。
この修理する権利はアメリカで最近話題になっており、2021年7月に米連邦取引委員会(FTC)が電子機器についても「修理する権利」に関する法律の施行を全会一致で可決しています。(それ以前から車両の修理する権利は施工されていました)
これにより、アメリカではメーカーに頼らず製品の修理ができるようになっています。
「修理する権利」にメーカーは反発をしています。
それは利益だけの話ではなく、誰もが修理をするということは画一的な優良修理がされるわけでは無くなってしまうため、不十分な修理により製品自体の安全性を損なうことがあるからです。
ユーザー自身の被害リスクがあるだけではありません。
メーカーではない業者の修理をして、もしそれが破損をして使っている人が怪我や事故を起こした場合、ニュースになる際にはメーカー名とともに自己が報じられてしまう可能性があります。
その修理をしたのが別の業者だとしてもセンセーショナルな記事を作りたいメディアの操作によりメーカー製品自体の問題として取り上げられてしましまいます。
一つの事故でメーカー事態が傾く時代ですからこうしたことは致命的になり得ます。
またメーカーは修理部品や情報、図面の提供をしなければならず、今まで社外秘にしていた情報が漏れることでコピーが生み出しやすい環境となってしまいます。
電子機器にまで「修理する権利」が施工されるきっかけになったのはアッ〇ル社のようです。
アッ〇ル社ではアップデートをすることで古いiP〇oneの動作が遅くなるようにプログラムしていたことが明らかになっています。
バッテリーの交換をすればそれで済む話だったのを、買い替え促進のために意図的に仕組んでおり大きな問題となりました。
その結果、「修理する権利」にまで及んでしまったことで、目先の利益のためにルール自体が変わる結果になってしまったわけです。
ここから私の本業の家具と日本での話にします。
この「修理する権利」ですが家具でも起きる問題です。
メーカー家具の修理でも同じ問題は起きており、修理するより新品を買ったほうが良いというほどではないにしろ、修理問題箇所以外の部分も丸ごと交換するような修理方法となることで、非常に高額になることがあります。
どこのどれがとは言いませんが。
ワークチェア類に関してはメーカー以外での修理は現状かなり難しいです。
大きな問題は部品です。
部品がメーカーから調達できない以上、その部品を作ってまで修理するのは現実的ではありません。
修理する権利が施工されていればメーカーは部品だけの販売をする必要があるため、メーカー以外でも誰でも修理をすることが可能となります。
メーカー以外の人はここまで聞くと家具も修理する権利が施工された方が良さそうに思えるかもしれませんが特に椅子についてはそう簡単なことではありません。
椅子は人間が座るため耐久性が非常に重要となります。
しっかり修理やメンテナンスを出来れば良いのですが、不十分な修理により椅子が破損するリスクがあり使用者が転倒するなど事故になり得ます。
そこでしっかり修理をする必要があるためメーカー修理があるのですが、そのメーカー修理が必要以上の全体修理にしてしまうことや、修理はせず丸ごと交換するといった対応をしてしまうため高くついてしまうわけです。これは安全のためでもあります。
ただ家具はアナログな製品ですから、現状はメーカー外の修理は一般的です。
私もイームズの家具の修理などは普通にします。(ヴィンテージ品です)
しかしパーツが手に入らないのがネックとなるので一般的な修理業者では限界があります。
家具は修理をして長く使うという文化でもあるので修理代は大きなポイントです。
メーカーが強くなるほどに独占的な家具販売と修理となってしまうため、今後は家具の修理代がかさみ維持ができないという問題は大きなものとなっていくでしょう。
その辺をどうしていくか私はちゃんと考えて自分のお客さんの為に行動していっているのですが、ネットショップやAI中心の世の中となると私のような専門家が居ないので独占的な修理によりユーザーにとって不利な未来が待っています。
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