昔はどうやってイームズシェルチェアを作っていたかご存知ですか?
ここで1948年から行われていたFRP(ガラス繊維入り強化プラスチック)製のシェルチェアの製造風景の映像があるのでご覧いただきましょう。
イームズオフィス公式がアップしている動画です。
このようなクラフトな製法で作っていました。
1脚1脚作るのに手間がかかります。
この作り方で80年代の終わりまで新品をハーマンミラー社は作っていましたが、「FRP素材は燃やすと炭素が出るしリサイクルが出来ないので環境に悪い」という理由で製造を終了します。
その後シェルチェアが復刻した際には素材をポリプロピレンに変更しました。
それから2013年(日本は2014年)にハーマンミラー社から待望のファイバーグラスシェルチェアが復刻しました。
ハーマンミラー社の新しいファイバーグラスシェルチェアに使われているファイバーグラスプラスチックは、環境への負荷が抑えられたモノマー※フリーで、VOC(揮発性有機化合物)やHAP(有害性大気汚染物質)を排出せずに製造できるため熱酸化装置を必要としません。
従来の方法で製造されるファイバーグラスプラスチックや、ヴィンテージのイームズシェルチェアに用いられたファイバーグラスプラスチックと比べて、新しいモノマーフリーの樹脂は製造工程でオゾンの発生が少なく、大気汚染も抑えられるため製造スタッフの作業環境もより安全になりました。
※重合反応によって重合体(ポリマー)を生成する単位物質のこと。
簡単に説明すると、”現在ハーマンミラー社が製造しているファイバーグラスシェルチェアは環境に負担がかかりづらくリサイクルもできて従業員も守ることが出来る製品”ということです。
そして現在のファイバーグラスシェルチェアの製造風景ですが、過去の製造風景に近い手作業で多くの工程をこなして一つ一つ作られています。動画は公開されていません。
もちろん現代の工場は昔と比べてコンピューターの利用や工具が進化をしています。
特に大きく変わったのはファイバー(繊維)の混入方法です。
昔はプレス機に手作業でファイバーを敷き詰めていましたが、現在は「ドライ・バインダー処理」をしています。
「ドライ・バインダー処理」とは、ファイバーをコンピューター数値制御装置の中でシェルチェアの形のスクリーンに吹き付けます。真空成型されるので、昔の製法のように吹き飛ばされて勇利する粒子を接着剤で固定する必要がありません。その後加熱してファイバーを溶かすことが形が成形されます。
そこからは人の手によりプレス機に移動をしてプラスチックの流し込みやショックマウントの接着など行います。
ファイバーグラスシェルチェアは手間が製造するのに手間がかかる椅子ですので、ポリプロピレン製のシェルチェアに比べて割高になるのはこういった理由からです。
昔からイームズシェルチェアが好きな人はファイバーグラスシェルチェアを好む傾向にあります。
今まではヴィンテージ品しか選択肢がありませんでしたが、新たに新品が手に入るような時代になったのは良いことです。
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