
以前から、「ミニマリスト」という言葉を見かけることが本当に増えたと思います。
一般的には、
できるだけ物を持たない
持ち物を極限まで減らす
家具をほとんど置かない
小さな部屋で必要最低限だけで暮らす
こういったライフスタイルを指して「ミニマリスト」と呼ぶことが多いように感じます。
ただ、以前から、この言葉の使われ方に少し違和感を持っていました。
家具やインテリアに関わる仕事をしてきた立場から見ると、現在広く使われている「ミニマリスト」という言葉は、本来の意味からかなり離れてしまっているように思えるからです。
少なくとも、インテリアの文脈で考えたとき、今広く認識されている「ミニマリスト」は、本来のミニマリズムとは少し違うものなのです。
そもそもミニマリズムは、アートの世界から生まれた言葉です
まず前提として、Minimalismという言葉は、もともと1960年代の現代アートから生まれた概念です。
代表的な作家には、
Donald Judd
Dan Flavin
Carl Andre
などがいます。
彼らの作品は、装飾や感情表現をできるだけ排除し、形そのもの、素材そのもの、構造そのものを際立たせることです。
ここで大切なのは、ミニマリズムとは「何もなくすること」ではない、という点です。
作品を消すわけではありません。
存在はある。
ただし余計なものを取り除き、本質だけを残す。
その結果として、作品そのものの存在感が強くなる。
これが本来のミニマリズムの考え方だったはずです。(諸説あります)
インテリアにおけるミニマリズムも、本来は近いものです。
この考え方をインテリアに置き換えると、本質はかなり見えやすくなります。
ミニマリズムとは、単純に家具を減らすことではないはずです。
物を持たないことでもありません。
本来は、空間に意図的な余白をつくることなのではないでしょうか。
たとえば十分に広い空間があったとして、その中に椅子を一脚だけ置く。
あるいは大きな部屋の中に必要最小限の家具だけを配置し、空間そのものを感じさせる。
そうすることで家具そのものが際立ちます。
空間に緊張感が生まれます。
余白そのものがデザインになります。
インテリアにおけるミニマリズムとは、本来こうしたものです。
しかし今の「ミニマリズム」や「ミニマリスト」は、少し違う意味になっている気がします。
物を減らす。
服を減らす。
家具を減らす。
部屋を小さくする。
持ち物をできるだけ減らす。
こうしたものです。
もちろん、そういう暮らし方そのものを否定したいわけではありません。
ただ、それをそのまま「ミニマリズム」と呼ぶことには違和感があります。
なぜなら、本来ミニマリズムとは「どれだけ減らすか」ではなく、何を残し、どう見せるかという思想だったはずだからです。
いつの間にか、空間をデザインする思想が、物を減らすことそのものに置き換わってしまったように感じています。
生活機能を削ることは、本当にミニマリズムなのでしょうか?
もう一つ、以前から気になっていることがあります。
いわゆる「ミニマリスト」と呼ばれる人たちの中には、生活そのものをかなり小さくしているケースがあります。
たとえば極端に狭い家に住む。
収納をほとんど持たない。
キッチンを小さくする。
けれど、ここに少し疑問があります。
例えば料理をしない生活を選んだとして、それはミニマリズムなのでしょうか。
料理をしないことそのものと、ミニマリズムという思想は、本来あまり関係がないはずです。
ミニマリズムだから料理をしない。
ミニマリズムだからキッチンを小さくする。
この考え方は、どこか繋がっていないように感じます。
本来であれば、きちんと料理ができる機能的なキッチンがある。
その上で空間としてどう見せるかを考える。
そこに余白をつくる。
それがインテリアとしてのミニマリズムなのではないでしょうか?
生活そのものを不便にすることとは話が違うように思います。
「狭い家に住むミニマリスト」は矛盾を感じます。
インテリアにおけるミニマリズムは空間に余白をつくることです。
余白をつくるためには、ある程度の空間が必要になります。
広い空間があるからこそ、あえて何も置かないという選択に意味が生まれます。
一方で、狭い空間の中で物を減らして生活を成立させることは、別の考え方のようにも思えます。
それは工夫された生活かもしれませんし、合理的な暮らし方なのかもしれません。
ただ、それをそのままインテリアのミニマリズムと呼ぶことには、やはり違和感があります。
ミニマリズムは「持たないこと」ではなく、「際立たせること」なのではないでしょうか?
少なくすることそのものに価値があるわけでもありません。
生活を不便にすることでもありません。
本来のミニマリズムとは、余計なものを取り除き、必要なものを残し、その存在や空間そのものを際立たせること。
「少なさ」そのものではなく、意図された余白に価値がある考え方なのではないでしょうか。
少なくとも、インテリアの世界にいた私は、そのように理解しています。
だからこそ今広く使われている「ミニマリスト」という言葉には、以前から少し違和感を持ち続けています。
もしかすると今広まっている「物を持たない暮らし」には、ミニマリズムとは別の、新しい言葉が必要なのかもしれません。

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