
昨今よく「円安」と言われますが、円が高くなる方向へ動くのも安くなる方向へ動くのも、市場の需給バランスが決めるものであり、それ自体に良い・悪いはありません。
固定為替相場の時代(1ドル=360円)から歴史的に見て、今の水準が円安なのかどうかという議論は一旦置いておきます。
しかし、為替の変動によって輸入品が価格に影響を受けることは確かです。
円安方向へ進めば、輸入家具の価格は上がるはずです。
家具業界ではこれまで、「円安の影響で価格改定します」といった案内が当たり前のように続いてきました。
では逆に、円高に進んだ時に値下げをするのか?という疑問が生まれます。
少し時代をさかのぼると、2008年頃から円高が進行し、2011年には1ドル=75円まで到達しました。
ではその時、輸入家具の値下げは行われていたのでしょうか?
私の記憶では、その期間に一度だけ各メーカーが価格改定として値下げをしました。
しかし、それもごくわずかな値下げに過ぎませんでした。
ところが、その後円安に転じれば、また「為替の影響による価格改定」という名の値上げを繰り返し、現在に至っています。
為替が円安方向に動き始めると、すぐに「為替の影響」という理由で値上げが行われました。
そして不思議なことに、為替レートが過去と同じ水準に戻ったとしても、家具の価格は以前の価格には戻らない。
むしろ同じ為替水準なのに価格だけが高く更新されていくのでした。
ちなみに当時の円高はメディアでも「輸出企業に悪影響」と散々非難されていました。
それが今では円安に対して批判が向けられています。
つまり、為替というものは市場が決めるものであり、そこに「適正水準」はありません。
どんな水準であっても批判されるものなのです。
そして結局のところ、円高だからといって輸入家具が安くなるとは考えにくいです。
歴史を見ても、その現実がよくわかります。
「為替による値上げ」は少なくとも建前として多用されてきたであり、値上げには他の要因も大きいということです。
特に昨今はインフレ(コロナ以降は物流費・原材料・エネルギーなどの構造的コストが上昇)の影響の方が強く、そちらが価格改定の主要因になっています。
むしろここ数年は値上げを続けすぎた結果、売れなくなり、価格調整せざるを得ない状況です。
値下げをしてみたり、セールを乱発してみたり……。
どれだけ値上げをしても売れ続けると見込んでいたのでしょうかね。

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