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エンベロップデスクとエンボディチェア──失われた理想のデスク環境とデザインの本質

エンベロップデスク

今思うと、ハーマンミラーのエンベロップデスクは本当に良いデザインでした。

あれにエンボディチェアを組み合わせた環境は、ひとつの到達点だったと思います。

 

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エンベロップデスクの優れたデザイン

エンベロップデスクの天板

何よりも、腕ごと天板に載せることができ、なおかつ胸のあたりまで天板が覆うように設計されたデザインは理想的でした。

さらに、天板のカーブも絶妙で、素材もプラスチック製。腕が痛くならないのです。

あれ以上のデスクワーク環境は、いまだに思い浮かびません。

デザイナーが製品化まで漕ぎつけたことには感心します。

ちなみに、このデスクを設計したのは Bill Stumpf & Jeff Weber(ビル・スタンフ & ジェフ・ウェバー)のコンビで、エンボディチェアと同じペアです。

 

欠点もあるが、それを補って余りある魅力

エンベロップデスクの脚

とはいえ、エンベロップデスクも完璧ではありませんでした。

最大の欠点は「揺れ」です。

タイピングをするだけでも細かく揺れました。

この振動は気になるものの、構造上、ある程度仕方がないとも言えます。

もっとフレームと脚を堅牢にすれば良かったのか、脚と脚の間に筋交いを入れるか、あるいはフレームを2本にするべきだったのかもしれません。

ただ、いろいろな制約の中で最終的な形状に落ち着いたのでしょう。

スマートで洗練された印象はとても良かったのですが、その代償が振動でした。

現在であれば素材も進化しており、異なるアプローチが可能だったかもしれません。

 

人類にとっての理想のデスクワーク環境だった

エンベロップデスクの白

理想的なデスクワーク環境とは何か──これは今でも人類の永遠のテーマですが、

すでに製造が終了してしまったエンベロップデスクとエンボディチェアの組み合わせは、人間の構造、動きやすさ、姿勢維持、すべてにおいて最適だったと思います。

これ以上の環境は、もう存在しないかもしれません。

 

良いデザインでも製造は終わる──売上という現実

エンベロップデスクの背面

しかし、どれだけ優れたデザインでも、ずっと続くとは限りません。

製造販売はは終了しています。

その理由の一つが「売上」です。

身も蓋もない話ですが、結局は良いものであっても売れなければ終わります。

エンベロップデスクは、オフィス用途に向かないという面がありました。

オフィスで大量導入するには、スペースやコスト面でのハードルが高く、一般的なデスクに比べて採用されにくかったのです。

さらに、導入するにはデスクに合わせた椅子や収納設備も必要で、どうしても全体の予算が膨らんでしまいます。

その結果、オフィスでは一部の採用にとどまり、あとは一部の個人ユーザーに限られ、売上のボリュームが出なかったのです。

そして終焉を迎えることとなりました。

 

現代の椅子とデスクが失ってしまった本質

一方で、現代のマーケティングでは、必ずしも「良いもの」が売れるとは限りません。

「良い」というのは、人間にとって本質的に良いもの──すなわち、身体構造に合い、自然に動けて、姿勢の維持がしやすいものを指します。

しかし現在のワークチェアやゲーミングチェアの多くは、むしろ依存性を生み、不健康な方向に誘導する設計が増えています。

いかにラクにだらけられるか、いかに動かずにいられるかを競っているようにも見えます。

その結果、消費者は「イメージ」で商品を選んでしまい、不自然な姿勢を取り続けることで体の構造そのものが変わってしまいます。

そして一度歪んだ姿勢は、正しい姿勢に戻すことが難しくなり、ますます悪い姿勢に進んでいきます。

 

デザインの本質とは何か

本来、デザインとは「人や社会のためにあるもの」です。

しかし、現代ではその本質が失われてしまったように感じます。

エンベロップデスクとエンボディチェアは、その本質を体現していた数少ないプロダクトだったのではないでしょうか。

売れなかったとしても、それが人間にとって良いものだったという事実は変わりません。

 

人のためのデザイン、企業のためではなかったのか

無理をした設計であったのは否定できませんが、エンベロップデスクはまさに「人のためのデザイン」でした。

しかし同時に、それは「メーカーのためのデザイン」ではなかったのです。それこそが本来のデザインではあるのですが、売れることが優先されることが人の為にはならない結果になっています。

 

人間の身体構造や自然な動きを尊重した結果、オフィスの大量導入やコスト効率とは相容れず、市場に広がることはありませんでした。

本当に良いデザインが売れるとは限らない──その現実は、少し皮肉でもあります。

 

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