ミッドセンチュリーモダンを代表するジョージ・ネルソンのボールクロックのデザインストーリーについてです。
下記のようなものが現在の定説となっています。
”ネルソンの仕事場にイサム・ノグチとバックミンスター・フラーがやってきて、ネルソンが制作中の時計に両氏が口を出し始め、酒を飲みながら深夜まであーでもないこーでもないと盛り上がったそうです。
翌朝ネルソンが二日酔いの頭で出勤すると、そこにはボールクロックのデザインが。ネルソン曰く「いまだに誰のデザインなのかは分からない。私じゃないのは確かだ。ふたつのバカなものを合体させて傑作を生み出す天才、ノグチの仕業だろう。」”
とまあこういったような話が過去の資料やいくつかの本でも書かれていました。
カーサブルータスに書いてあるのが有名だと思います。
最終的な仕上げをアーヴィン・ハーパーがしたのか?ノグチだとしたら何故そのままネルソンアソシエイツのデザインとしてリリースしたのか?など気になる部分がある話ではあります。
ボールクロックの本当のデザインストーリーとは?
ちなみにChatGPTにボールクロックのデザインストーリを尋ねるとこんな回答でした。
ジョージ・ネルソン(George Nelson)の「ボールクロック(Ball Clock)」は、ミッドセンチュリーモダンを象徴するアイコニックな壁掛け時計のひとつです。そのデザインの背景には、面白いエピソードと時代の精神が反映されています。
◾ボールクロックのデザインストーリー
✴️ 誕生のきっかけは“酔った夜”?
1947年、ジョージ・ネルソンは、ネルソン・オフィスの一員であったアーヴィング・ハーパー(Irving Harper)、そして**ハワード・ミラー社(Howard Miller Clock Company)**の依頼を受けて、新しいタイプの家庭用時計のデザインを考えていました。
ある夜、ネルソン、ハーパー、そしてその他の同僚たちは酔いながら、未来的でユニークな時計についてブレインストーミングをしていました。その席で、誰かが「時刻を示す数字はいらない」「中心から放射状に広がるデザインがいい」などと語り合う中で、アイデアが自然発生的に生まれたといわれています。
この夜の記憶はあいまいで、誰が最初に「ボールを使おう」と言い出したのかもわからないというのが、後年ネルソン自身の証言です。
✴️ デザインの特徴
中央から放射状に伸びる12本のスポーク
先端につけられたカラフルな木製のボール
数字のない文字盤
抽象的かつ視覚的に時間を表す構造
これらの要素は当時としては非常に革新的で、「時間を読むための機械」から「アートとしてのオブジェ」へのシフトを象徴していました。
✴️ アーヴィング・ハーパーの役割
ジョージ・ネルソンの名義で発表されたデザインではありますが、実際のスケッチや造形を行ったのはアーヴィング・ハーパーであることが後に明らかになっています。彼はネルソンの下で多くの重要なプロダクトを手がけながら、長らく無名の存在でした。
✴️ ハワード・ミラー社からの発売
ボールクロックはハワード・ミラー社から1950年代に製品化され、市場に登場します。この時期はちょうどアメリカの中産階級が拡大し、家庭にモダンデザインを取り入れる動きが強まっていた時代。ボールクロックは、単なる時間表示機器ではなく、家庭のインテリアの中心としてのアートピースとして受け入れられました。
✴️ その後の評価と現代での復刻
現在では、ヴィトラ・デザイン・ミュージアムが正式なライセンスのもとで復刻製造しており、世界中のデザイン愛好家に愛されています。特にミッドセンチュリーモダンのインテリアにおいては、チャールズ&レイ・イームズの家具やネルソンのほかのプロダクトと並び、空間を彩る定番アイテムとなっています。
◾なぜボールクロックは支持され続けるのか?
時間の概念を抽象化した芸術的表現
無駄を削ぎ落としたミニマルな機能美
どこかポップで遊び心のあるフォルム
見る者に「未来の生活」を想起させるユートピア的なデザイン
◾まとめ
ボールクロックは、単なるプロダクトではなく、時代の価値観や生活様式の変化を象徴するアイコンです。ジョージ・ネルソンとそのチームの創造性、そして1950年代アメリカの楽観的な未来志向が凝縮された、時代を超えるデザインと言えるでしょう。
ところどころ謎の文章があるのですが、おおむね定説の通りです。
でもボールクロックには実は70年代に別の説が存在するのです。
それが下記のようなものです。
もともとハワードミラー社から時計の製作依頼がネルソンに入っていました。
1948年のある日、ジョージ・ネルソンがアーヴィン・ハーパーとイサム・ノグチを相談相手に時計の問題について議論をしている時、誰かが「いったい、時計とは何だ?」と質問をしました。
その概念を説明するのに中央で交わる6本の線が描かれました。
時計は時間計測の図表であるということになり、これをもとに最終製品まで担当したのがハーパーでした。
抽象図形を可能な限り活かして作ったそうです。
デザインの際に壁掛け時計は室内装飾の一要素であり、必要なのは数字ではなく針の位置ということにし、中央から伸びる真鍮の先にカバのボールを付けることにしました。
このボールは月の顔を想像させるようにするためだったそうです。
こういったストーリーでした。
カーサブルータスの話は00年代以降なので、上記の方が古い情報ゆえ信憑性は高いです。
なにせネルソンも存命時の話ですから。
でも前者の方がストーリーとして格好良いです。
たまたま集まった才能たちの偶然により生み出された時計みたいな印象です。
真相は定かではありませんが、しばしば格好良いストーリーが定説として採用されることはあります。
あまりどのデザインがどうとは言いづらいのですが他にもあります。
そもそも時計のデザインを考えたのもコストゆえの装飾での差別化でしたからね。
別に良いものを作ろうとして装飾を考えたわけではなく、値段を高くしてもいい訳として装飾過多にしたわけですから。
答えはないので各々で解釈はお願いします。
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