歴史的な事件が起きました。
米国のアメリカンモダンデザインを代表し、現代のワークプレイスシーンにおいて革新的な製品をリリースする家具メーカー「Herman Miller(ハーマンミラー)」社が、同じくアメリカンモダンデザインを代表しラグジュアリー市場において大きな影響力を持つ高級家具メーカー「Knoll(ノル)」を18億ドルで買収することに合意がされました。(本買収は 2021 年暦年の第 3 四半期末までに完了する予定です。)
お互いミッドセンチュリー期に躍進を遂げ、アメリカンモダンデザインの歴史を作ったともいわれる2社ですから、それがとうとうコンビネーションをするというのはすごいことです。
※Knollの読みはノル/ノール
今回の買収についてハーマンミラー社CEOのアンディ・オーウェンはこう述べています。
”テレワークモデルが企業の新しい標準スタイルになるにつれて、企業は成長をサポートしながら、コラボレーション、文化、集中的な仕事を促進するためのオフィスを再考しています。同時に、ユーザーは自宅に多額の投資をしています。
幅広いポートフォリオ、グローバルフットプリント、高度なデジタル機能により、私たちは住みながら仕事をしているあらゆる場所の顧客とともに、ブランド、テクノロジー、才能と革新、結合されたビジネスのすべての分野で意味のある成長の機会を作成します。”
コロナウイルスの感染拡大を機に変化したワークスタイルと、アフターコロナを見据えたオフィス回帰を焦点とした取り組みのための買収です。
同じ米国といえどミシガンのハーマンミラー社とニューヨークのノル社は全く違った場所で創業しました。
ハーマンミラーとノルはよく比べられます。
よくその理由は活躍した時期とデザイナーに関係します。
両社とも1940年代から新しいモダンデザインのリリースを始め飛躍的に伸びた会社であり、代表的なデザイナーがお互い関係していることにあります。
ハーマンミラー社を代表するデザイナーと言えばイームズ夫妻ですが、もしハーマンミラー社にイームズ夫妻が行かなかったらノル社に言っていた可能性があります。事実、イームズ夫妻はノル社からオファーもありました。
アレキサンダー・ジラードはハーマンミラー、ノルともに家具デザインを発表し、イサム・ノグチも両社から家具を発売しています。
ノル社の代表的デザイナーであるエーロ・サーリネンはチャールズ・イームズと共同して仕事をしていたこともあり、ドン・アルビンソンやハリー・ベルトイアはもともとイームズオフィスのメンバーです。
ミース・ファン・デル・ローエをノルへ導いたフローレンス・ノルはクランブルック時代にイームズやサーリネンらと交友関係があるなど、同社はデザイナーの関係が被っています。
これゆえ、モダンデザインの歴史の中で同社はよく比べられていました。
市場は価格帯も違いますし異なったアプローチをしてますが、両社ともオフィスに力を入れているのは昔から変わりません。
今後のハーマンミラー社がノルの製品をどう扱っていくのか注目が集まりそうです。
コメント